静かなる、恋の包囲網

人の口に戸は立てられない。 全社員向けの掲示板に塔子の写真が載せられた以上、情報漏洩の犯人は塔子だったという噂が駆け巡ることだろう。その事は塔子に容易に想像できた。

「とりあえず、今日はこのまま早退してください。明日以降の事は社内で協議して改めて連絡します」

塔子のことを労わるわけでもなく、追求することもなく、辻本は淡々と告げた。 まるで情報漏洩の犯人は塔子だと確信しているような態度だった。

「私は本当に何もしていません」

無駄だと知りながらも、塔子は辻本に詰め寄った。

「たとえそうだとしても、状況証拠はあなたに不利なんです」

この時、今社内に自分の見方は誰もいないと塔子は感じた。
無意識のうちにぎゅっと拳をにぎり、奥歯を噛み締め、必死で冷静な自分を保とうとしていた。

―――悔しいけれど、どうすることもできない。

この時の塔子はただ辻本の言葉に従うことしかできなかった。