静かなる、恋の包囲網

「何か反論があるかね?」
「・・・いいえ」

身に覚えのない濡れ衣だと叫びたかったが、会社に内緒でクラブのバイトをしていた塔子には何も言えない。
ただ悔しさに唇をかみしめることしかできなかった。

「では、君の処分については後ほど考えるとして、しばらくはプロジェクトに関わる業務や重要案件からは外れてもらう。合わせて、君の社内システムにおける権限も一旦凍結させてもらうから、そのつもりで」

―――そんな…

秘書室にいながら社員としての権限を失えば、メールのやりとりも文書作成のための資料閲覧もできない。 おそらく通常の業務は何もできなくなるだろう。 これは謹慎処分のようなものだ。
このままではまずいと塔子自身感じながらもその場では何の言えず、ただ黙っていることしかできなかった。
こんなとき、動揺して取り乱し泣き崩れれば、女子として可愛く見えたのかもしれない。 そうすれば、この場にいた誰かが同情しなんだかの援護をしてくれたのかもしれないが、不器用な塔子にできなかった。

「話は以上だ。後は辻本の指示に従ってくれ」

衝撃を受けながらも淡々と表情を崩さない塔子に、城田専務は訝し気な眼差しを向けていた。