東京から約八時間。
着いたのは、バリ島の海の側にある高級ヴィラだった。
「じゃあ、みなさん、三十分後にここのロビー集合で」
瑠加はそう言うと、スーツケースを引くベルボーイと共に部屋に向かって行った。
案内された部屋に入った玲奈は、まず窓の外の景色に圧倒された。
プライベートプールの向こうにはコバルトブルーの海が広がっていて、太陽の日差しが海面を照らしている。
昨日まで真冬の東京で過ごしていたのが嘘みたいだ。
ソファには修のTシャツが無造作に置かれている。
マネージャーの土居から「パスポートはお持ちですか?」と聞かれたのは、Grand-Blueの年末までの怒涛の仕事が無事終わり、メンバー全員五日間の正月休みが終わった直後だった。
Grand-BlueのMV撮影のためのバリ島行きに、それぞれのプロ彼女たちも連れて行っても良い、ということだった。
メンバーと関係者は先に到着しており、プロ彼女たちは翌日の今日、バリ島に入った。
玲奈はスーツケースからワンピースとサンダルを取り出し、腕時計を見る。
集合時間が近づいていた。
出発の空港で初めて会った、サワのプロ彼女の沙織、アッキーの本彼女の瑞希。
空港や機内で話すわけにもいかないので、バリに着いてからランチしようと瑠加が提案してくれたのだ。
ヴィラからタクシーに乗り、着いたのは海辺のシーフードレストランで、四人は外のテラス席に通された。
「ホントに海がキレイだよね」
沙織は玲奈と同い年くらいで、髪をお団子にまとめ、ノースリーブのシャツとショートパンツからスラリと健康的に伸びた手足が印象的だ。
「瑠加ちゃん、お店の手配ありがとう」
対照的に、瑞希は小柄で肌が透き通るように白く、アッキーと同い年の二十六歳と聞いているが、大学生と言われてもおかしくないほど若く見える。
「玲奈さん、プロ彼女の生活には慣れた?」
ビールで乾杯した後、開口一番にこう尋ねてきたのは沙織だった。
「そうですね…修との生活には慣れてきたんですけど、やっぱりまだ家政婦さん状態でして…」
「タクミくんとかけもちって聞いたけど」
次に口を開いたのは、乾杯のビールのグラスをほぼ空にした瑞希だった。
「タクミくんとも同じく、家政婦状態ですね」
玲奈が答えると、沙織が「敬語使わなくていいよ」と微笑んでくれた。
「でもなんだかんだで、タクミくんとの試用期間も終わって本採用になったんだよね?」
瑠加はこの場でも運ばれてきたシーフードサラダを取り分けてくれる。
玲奈は「そうだよ」と言って瑠加から渡された皿を受け取る。
沙織と瑞希はお互い顔を見合わせた。
「ん?」
そんな二人を見て玲奈は首をかしげる。
沙織が口を開く。
「家政婦さん状態だと思ってるのは、玲奈さんだけじゃないのかなって…」
瑠加はサラダをフォークでつつきながらニヤリとした。
「やっぱり沙織さんもそう思うよね」
その言葉に瑞希も「私もそう思う」と付け加えた。
「え?どういうこと?」
玲奈は三人が何を言いたいのか分からない。
「沙織さん、瑞希さん。玲奈さんはこう見えて恋愛下手なので、詳しく説明願えますでしょうか」
瑠加のふざけたような丁寧語に、沙織と瑞希はクスクスと笑う。
「修くんもタクミくんも、彼女として玲奈さんと距離を縮めたいって思ってるのかも」
「え?」
沙織の言葉に玲奈は目を丸くする。
「だって、修からはタクミくんの部屋に入るの禁止っていうお達しが出てるんだよね、玲奈さん」
瑠加は更にニヤニヤしながらビールを一口飲んだ。
そして、流暢な英語で店員を呼び、瑞希の二杯目のビールを注文する。
瑞希は「へぇ、あの修くんがねえ」と言って空になったグラスをテーブルの端に寄せた。
修にタクミとのかけもちを持ちかけた時は嫌そうだったが、それは単に自分に向けられるプロ彼女の仕事がなおざりにならないか心配しているだけだと思っていた。
「いやいや、修は家事と犬の世話をしてくれたらいいっていうスタンスだから、距離を縮めたいとかはないと思うけど」
「修くんの性格からすると、距離の縮め方を探ってるのかも」
瑞希は運ばれてきた二杯目のビールに、にこにこしながら手を伸ばす。
「このバリ島で進展があるかもね。修くんとはずっと同じ部屋なんだし」
沙織もニヤニヤしながらサラダを口に運んだ。
沙織の言葉に玲奈は顔が熱くなってくるのが分かった。
先ほど部屋のソファにあった修のTシャツを思い出す。
マンションで同居するのと、ヴィラの同じ部屋で過ごすのは大きな違いだ。
玲奈も二杯目のビールに手を伸ばす。
「沙織さんと瑞希さんは、順調?」
そう言って瑠加はフライドシュリンプを口に運んだ。
二杯目はパインジュースを飲んでいる。
「うちは、変わらず、かな」
瑞希もフライドシュリンプを食べながらにっこり笑った。
「さすが。安定のアッキーと瑞希さんだね」
沙織もつられてにっこりする。瑞希の笑顔はその場の空気を和ませる。
「まあ、色々あった過去を乗り越えてるからね」
アッキーと瑞希は一度別れたことがある、と聞いている。
「なんで別れたかって、理由聞いてもいい?」
沙織の質問に、瑠加と玲奈も少し前のめりになる。
瑞希はそんな三人を見てふっと笑顔になる。
「そんな特別な理由じゃないよ。芸能人と一般人の違いについていけなかっただけ」
「それでも元に戻ったんだよね? その違いをどうやって埋めたの?」
真顔で尋ねる沙織に、思わず瑠加と玲奈は目を合わせる。
瑞希はビールをゆっくり一口飲んでから口を開いた。
「結局は私の覚悟の持ちようってことに、気づいたんだよね」
「覚悟…」
瑠加も真顔になる。
「売れてくればもちろん生活スタイルは変わっていくよ。でもアッキーの目指すものはデビュー前から変わってなかった。私がそれをちゃんと理解できてなくて、覚悟もできてなかったんだよね」
三人は言葉が出なかった。
瑞希はGrand-Blueの中で唯一のリアル彼女だ。
報酬も契約も無い。
別れる時もそうだが、元に戻る時にも色々あったと想像できる。
そして、瑞希は覚悟を持つことを心に決めた。
黙ってしまった三人を前にして、瑞希は穏やかにほほ笑む。
「そんなに深刻にならないでよ。せっかくバリ島まで来たのに」
そして、こう続ける。
「戻る覚悟が持てたのは…私に向けられたアッキーの想いがあったからかな」
三人は一瞬固まった。
瑠加は「キャー」と言って手を口に当てる。
沙織は目を丸くした。
玲奈は、思わず手で目を覆った。
「やられたわ、瑞希さん」
瑠加はジュースを一口飲んだ。
「てゆうか、アッキーにやられたよね」
沙織は手のひらで顔を仰いでいる。
玲奈は「やっぱりリアル彼女は、深い」と思った。色々乗り越えた瑞希の、この余裕も。
「ねえ、あれってGrand-Blueの撮影じゃない?」
瑞希が指さした先のビーチには、撮影クルーらしき一団が見えた。
沙織がバッグから双眼鏡を取り出す。
「ほんとだ。あれはタクミくんと修くんかな」
双眼鏡を手渡された瑠加も「マナティ、居た」と声のトーンが上がっている。
玲奈も双眼鏡を借りてビーチを見回した。
大きな日傘の下で椅子に座っている修が見えた。
隣ではマナティとサワが笑いながら何か話している。
アッキーとタクミはそれぞれスタッフと会話しているようだった。
瑞希と沙織の「サワの今の髪色、似合ってるね」「本人も気に入ってるみたい」という会話の隣でふと瑠加を見ると、撮影クルーの方に向かって寂し気な表情をしているように見えた。
その後、ランチを終え、ヴィラに戻った玲奈はロビーで瑠加に呼び止められた。
「バリに出発する前の日、マンションの前に女の人がウロウロしてて…声掛けたら『梅田さんの友人です』って言ったんだけど、心当たりある?」
玲奈は首を横に振る。
会社を辞めたことはさずがに親には話したが、アイドルのプロ彼女に転職したなんて言えるわけがない。
住む所も「とりあえず友達の所にお世話になってる」とだけ伝えただけだ。
もちろん家族以外には何も話していない。
「どんな感じの人だった?」
瑠加は記憶を手繰りながら答える。
「帽子かぶってたから顔はハッキリ見えなかったんだけど、年は玲奈さんより少し上って感じだったかな。長い髪を一つに結んでたと思う」
そんな友人、全く心当たりがない。
瑠加は声のトーンを落とし、こう告げる。
「芸能人の周りには色んな人がいるから、念のため気を付けたほうがいいよ」
「記者、とか?」
玲奈も声のボリュームを落とす。
「アイドルの住むマンションは隠しててもどこかで漏れちゃうことはあるんだけど、玲奈さんの名前を出してきたってのが、ちょっと心配…」
玲奈は一瞬頭が真っ白になった。
何かやらかしてしまったんだろうか…。今までの自分の行動を思い起こす。
そんな玲奈を見て、瑠加は笑顔を作った。
「ごめん。ちょっと大げさに言ったけど、いざとなったら警備とか頼んでもらえると思うし、もう少し様子見てもいいかも」
考えを巡らせているいる玲奈の耳元で瑠加が囁いた。
「それよりも、バリ島で修と二人の夜、がんばってね」
スカートの裾を翻して颯爽と自分の部屋へ向かう瑠加の後ろ姿を見ながら、玲奈はまた頭が真っ白になった。
着いたのは、バリ島の海の側にある高級ヴィラだった。
「じゃあ、みなさん、三十分後にここのロビー集合で」
瑠加はそう言うと、スーツケースを引くベルボーイと共に部屋に向かって行った。
案内された部屋に入った玲奈は、まず窓の外の景色に圧倒された。
プライベートプールの向こうにはコバルトブルーの海が広がっていて、太陽の日差しが海面を照らしている。
昨日まで真冬の東京で過ごしていたのが嘘みたいだ。
ソファには修のTシャツが無造作に置かれている。
マネージャーの土居から「パスポートはお持ちですか?」と聞かれたのは、Grand-Blueの年末までの怒涛の仕事が無事終わり、メンバー全員五日間の正月休みが終わった直後だった。
Grand-BlueのMV撮影のためのバリ島行きに、それぞれのプロ彼女たちも連れて行っても良い、ということだった。
メンバーと関係者は先に到着しており、プロ彼女たちは翌日の今日、バリ島に入った。
玲奈はスーツケースからワンピースとサンダルを取り出し、腕時計を見る。
集合時間が近づいていた。
出発の空港で初めて会った、サワのプロ彼女の沙織、アッキーの本彼女の瑞希。
空港や機内で話すわけにもいかないので、バリに着いてからランチしようと瑠加が提案してくれたのだ。
ヴィラからタクシーに乗り、着いたのは海辺のシーフードレストランで、四人は外のテラス席に通された。
「ホントに海がキレイだよね」
沙織は玲奈と同い年くらいで、髪をお団子にまとめ、ノースリーブのシャツとショートパンツからスラリと健康的に伸びた手足が印象的だ。
「瑠加ちゃん、お店の手配ありがとう」
対照的に、瑞希は小柄で肌が透き通るように白く、アッキーと同い年の二十六歳と聞いているが、大学生と言われてもおかしくないほど若く見える。
「玲奈さん、プロ彼女の生活には慣れた?」
ビールで乾杯した後、開口一番にこう尋ねてきたのは沙織だった。
「そうですね…修との生活には慣れてきたんですけど、やっぱりまだ家政婦さん状態でして…」
「タクミくんとかけもちって聞いたけど」
次に口を開いたのは、乾杯のビールのグラスをほぼ空にした瑞希だった。
「タクミくんとも同じく、家政婦状態ですね」
玲奈が答えると、沙織が「敬語使わなくていいよ」と微笑んでくれた。
「でもなんだかんだで、タクミくんとの試用期間も終わって本採用になったんだよね?」
瑠加はこの場でも運ばれてきたシーフードサラダを取り分けてくれる。
玲奈は「そうだよ」と言って瑠加から渡された皿を受け取る。
沙織と瑞希はお互い顔を見合わせた。
「ん?」
そんな二人を見て玲奈は首をかしげる。
沙織が口を開く。
「家政婦さん状態だと思ってるのは、玲奈さんだけじゃないのかなって…」
瑠加はサラダをフォークでつつきながらニヤリとした。
「やっぱり沙織さんもそう思うよね」
その言葉に瑞希も「私もそう思う」と付け加えた。
「え?どういうこと?」
玲奈は三人が何を言いたいのか分からない。
「沙織さん、瑞希さん。玲奈さんはこう見えて恋愛下手なので、詳しく説明願えますでしょうか」
瑠加のふざけたような丁寧語に、沙織と瑞希はクスクスと笑う。
「修くんもタクミくんも、彼女として玲奈さんと距離を縮めたいって思ってるのかも」
「え?」
沙織の言葉に玲奈は目を丸くする。
「だって、修からはタクミくんの部屋に入るの禁止っていうお達しが出てるんだよね、玲奈さん」
瑠加は更にニヤニヤしながらビールを一口飲んだ。
そして、流暢な英語で店員を呼び、瑞希の二杯目のビールを注文する。
瑞希は「へぇ、あの修くんがねえ」と言って空になったグラスをテーブルの端に寄せた。
修にタクミとのかけもちを持ちかけた時は嫌そうだったが、それは単に自分に向けられるプロ彼女の仕事がなおざりにならないか心配しているだけだと思っていた。
「いやいや、修は家事と犬の世話をしてくれたらいいっていうスタンスだから、距離を縮めたいとかはないと思うけど」
「修くんの性格からすると、距離の縮め方を探ってるのかも」
瑞希は運ばれてきた二杯目のビールに、にこにこしながら手を伸ばす。
「このバリ島で進展があるかもね。修くんとはずっと同じ部屋なんだし」
沙織もニヤニヤしながらサラダを口に運んだ。
沙織の言葉に玲奈は顔が熱くなってくるのが分かった。
先ほど部屋のソファにあった修のTシャツを思い出す。
マンションで同居するのと、ヴィラの同じ部屋で過ごすのは大きな違いだ。
玲奈も二杯目のビールに手を伸ばす。
「沙織さんと瑞希さんは、順調?」
そう言って瑠加はフライドシュリンプを口に運んだ。
二杯目はパインジュースを飲んでいる。
「うちは、変わらず、かな」
瑞希もフライドシュリンプを食べながらにっこり笑った。
「さすが。安定のアッキーと瑞希さんだね」
沙織もつられてにっこりする。瑞希の笑顔はその場の空気を和ませる。
「まあ、色々あった過去を乗り越えてるからね」
アッキーと瑞希は一度別れたことがある、と聞いている。
「なんで別れたかって、理由聞いてもいい?」
沙織の質問に、瑠加と玲奈も少し前のめりになる。
瑞希はそんな三人を見てふっと笑顔になる。
「そんな特別な理由じゃないよ。芸能人と一般人の違いについていけなかっただけ」
「それでも元に戻ったんだよね? その違いをどうやって埋めたの?」
真顔で尋ねる沙織に、思わず瑠加と玲奈は目を合わせる。
瑞希はビールをゆっくり一口飲んでから口を開いた。
「結局は私の覚悟の持ちようってことに、気づいたんだよね」
「覚悟…」
瑠加も真顔になる。
「売れてくればもちろん生活スタイルは変わっていくよ。でもアッキーの目指すものはデビュー前から変わってなかった。私がそれをちゃんと理解できてなくて、覚悟もできてなかったんだよね」
三人は言葉が出なかった。
瑞希はGrand-Blueの中で唯一のリアル彼女だ。
報酬も契約も無い。
別れる時もそうだが、元に戻る時にも色々あったと想像できる。
そして、瑞希は覚悟を持つことを心に決めた。
黙ってしまった三人を前にして、瑞希は穏やかにほほ笑む。
「そんなに深刻にならないでよ。せっかくバリ島まで来たのに」
そして、こう続ける。
「戻る覚悟が持てたのは…私に向けられたアッキーの想いがあったからかな」
三人は一瞬固まった。
瑠加は「キャー」と言って手を口に当てる。
沙織は目を丸くした。
玲奈は、思わず手で目を覆った。
「やられたわ、瑞希さん」
瑠加はジュースを一口飲んだ。
「てゆうか、アッキーにやられたよね」
沙織は手のひらで顔を仰いでいる。
玲奈は「やっぱりリアル彼女は、深い」と思った。色々乗り越えた瑞希の、この余裕も。
「ねえ、あれってGrand-Blueの撮影じゃない?」
瑞希が指さした先のビーチには、撮影クルーらしき一団が見えた。
沙織がバッグから双眼鏡を取り出す。
「ほんとだ。あれはタクミくんと修くんかな」
双眼鏡を手渡された瑠加も「マナティ、居た」と声のトーンが上がっている。
玲奈も双眼鏡を借りてビーチを見回した。
大きな日傘の下で椅子に座っている修が見えた。
隣ではマナティとサワが笑いながら何か話している。
アッキーとタクミはそれぞれスタッフと会話しているようだった。
瑞希と沙織の「サワの今の髪色、似合ってるね」「本人も気に入ってるみたい」という会話の隣でふと瑠加を見ると、撮影クルーの方に向かって寂し気な表情をしているように見えた。
その後、ランチを終え、ヴィラに戻った玲奈はロビーで瑠加に呼び止められた。
「バリに出発する前の日、マンションの前に女の人がウロウロしてて…声掛けたら『梅田さんの友人です』って言ったんだけど、心当たりある?」
玲奈は首を横に振る。
会社を辞めたことはさずがに親には話したが、アイドルのプロ彼女に転職したなんて言えるわけがない。
住む所も「とりあえず友達の所にお世話になってる」とだけ伝えただけだ。
もちろん家族以外には何も話していない。
「どんな感じの人だった?」
瑠加は記憶を手繰りながら答える。
「帽子かぶってたから顔はハッキリ見えなかったんだけど、年は玲奈さんより少し上って感じだったかな。長い髪を一つに結んでたと思う」
そんな友人、全く心当たりがない。
瑠加は声のトーンを落とし、こう告げる。
「芸能人の周りには色んな人がいるから、念のため気を付けたほうがいいよ」
「記者、とか?」
玲奈も声のボリュームを落とす。
「アイドルの住むマンションは隠しててもどこかで漏れちゃうことはあるんだけど、玲奈さんの名前を出してきたってのが、ちょっと心配…」
玲奈は一瞬頭が真っ白になった。
何かやらかしてしまったんだろうか…。今までの自分の行動を思い起こす。
そんな玲奈を見て、瑠加は笑顔を作った。
「ごめん。ちょっと大げさに言ったけど、いざとなったら警備とか頼んでもらえると思うし、もう少し様子見てもいいかも」
考えを巡らせているいる玲奈の耳元で瑠加が囁いた。
「それよりも、バリ島で修と二人の夜、がんばってね」
スカートの裾を翻して颯爽と自分の部屋へ向かう瑠加の後ろ姿を見ながら、玲奈はまた頭が真っ白になった。

