「…あ、あの…どうかした?」
静か過ぎる空間が耐えられなくなって戸神くんに尋ねると九条くんは珍しく困ったようにチラッと横を見てから「えっと…」と呟いて、それからまた私の方を真っ直ぐ見てきた。
「…今野さんが最近使っているシャンプーと同じ物がうちにあるのですが、そのまま置いとくだけなのももったいないのでもし良かったら今晩使って行きませんか?」
「…えそれってつまり…」
泊まっていかないか?って事…?
「あの…」
「いつも僕の方の仕事せいで2人でゆっくり出来る機会があんまりなかった気がするので…今日は貴方と…貴方の事をもっとよく知りたいと思いまして…両親も(殺しの)仕事で明後日まで帰って来ませんし」
「…わ、私も!…私も…もっと…もっと九条さんの事が知りたい…です…!」
う、嬉しい!!今日ずっと戸神くんと一緒に居られるなんて!!
➖彼女の太陽のような笑顔は僕には眩し過ぎた。
彼女は何も知らない…私の事を何ひとつ。
「私…戸神くんを好きになって良かった…」
あぁ…なんて可哀想な女の子なんでしょうね、こんな悪人に良いように利用されて…。
「本当に…本当に好きになって良かった…」
僕は貴方の事なんてこれっぽっちも何とも思っていないのに。
彼女は僕にとってただ、私が普通の日常を送るためにかかせない周囲に溶け込むためだけに選んだカモフラージュでしかないのに。
「戸神さん、明日、私、戸神くんが好きな食べ物たくさん作るね!」
「ふふっ。それは…とても楽しみです」
ねぇ今野さん、嘘も優しさも親切もね、簡単に作れるものなんですよ?
僕は堕天使だ…。
おわり



