二階に上がると、カフェの女性店員がにこやかに顔を上げた。
「店内のご利用ですか? お薬のご相談はされますか?」
「あ、いえ。待ち合わせで」
私が答えようとすると、店員の視線が私と沢渡先生を交互に見た。
そして、柔らかい笑顔で言った。
「お連れ様ですか?」
「違います」
沢渡先生の返事は、秒だった。
本当に秒だった。
私は一瞬、顔が固まるのを感じた。
違う。
それは正しい。
私たちは恋人でも夫婦でもないし、ただの捜査協力者で、今は任意聴取のために来ている。
だから否定は当然。
当然なのに。
その速度は、少し刺さる。
店員が「あら、すみません」と笑う。
さらに悪気なく続けた。
「ご夫婦でのご利用かと思いまして」
「ふ、夫婦……っ」
私は完全に言葉に詰まった。
沢渡先生は表情を変えない。
「違います」
二回目も早い。
しかも、より正確に切った。
胸の奥に、小さな痛みが走る。
何を傷ついているんだろう。
違うのは事実なのに。
むしろ否定してくれない方が困るのに。
「店内のご利用ですか? お薬のご相談はされますか?」
「あ、いえ。待ち合わせで」
私が答えようとすると、店員の視線が私と沢渡先生を交互に見た。
そして、柔らかい笑顔で言った。
「お連れ様ですか?」
「違います」
沢渡先生の返事は、秒だった。
本当に秒だった。
私は一瞬、顔が固まるのを感じた。
違う。
それは正しい。
私たちは恋人でも夫婦でもないし、ただの捜査協力者で、今は任意聴取のために来ている。
だから否定は当然。
当然なのに。
その速度は、少し刺さる。
店員が「あら、すみません」と笑う。
さらに悪気なく続けた。
「ご夫婦でのご利用かと思いまして」
「ふ、夫婦……っ」
私は完全に言葉に詰まった。
沢渡先生は表情を変えない。
「違います」
二回目も早い。
しかも、より正確に切った。
胸の奥に、小さな痛みが走る。
何を傷ついているんだろう。
違うのは事実なのに。
むしろ否定してくれない方が困るのに。



