私は何も言えなかった。
先生は視線を逸らさなかった。
「今井。俺の相棒で終わるな」
冷静な声のはずなのに、どこか必死だった。
「君が隣にいないと、俺はもう合理的でいられない」
先生が自分でその言葉に驚いたように、少しだけ眉を寄せる。
それでも止まらなかった。
「君にだけは、俺の弱さを隠したくない」
胸が、苦しい。
「君が怪我をすると困る。捜査上ではなく、俺が困る」
先生の手が、白衣の端を軽く握った。
「君を失いたくない。これは、所見ではなく本音だ」
私は、泣きそうになった。
沢渡先生が、こんなに不器用に、必死に、言葉を差し出してくれている。
冷たい氷のように見えた人が、怖いものを抱えたまま、私の前でだけ少し溶けている。
私は一歩、先生に近づいた。
「先生が怖いままでいいです」
先生の目が揺れる。
「私が隣にいます」
「今井」
「見られないものは、私が見ます」
私は左手を、胸の前でぎゅっと握った。
「でも、私が走りすぎる時は、先生が止めてください」
先生は黙って聞いている。
その目が、もう氷だけではないと、私は知っている。
「それが、私たちの共犯関係です」
最初の共犯は、先生の弱点を秘密にすることだった。
私が先生の弱みを握り、事件のために利用した。
けれど、今は違う。
弱みを握る共犯ではなく、互いの弱さを守り合う共犯。
誰にも見せない本音を預け合う共犯。
恋人として、秘密を抱え合う共犯。
「私は、先生の秘密をこれからも守ります」
声が少し震えた。
「責任だからじゃありません。相棒だからだけでもありません」
私は息を吸った。
「先生が好きだからです」
沢渡先生の目が、わずかに見開かれた。
本当に、ほんのわずか。
でも、私にはそれで十分だった。
先生は視線を逸らさなかった。
「今井。俺の相棒で終わるな」
冷静な声のはずなのに、どこか必死だった。
「君が隣にいないと、俺はもう合理的でいられない」
先生が自分でその言葉に驚いたように、少しだけ眉を寄せる。
それでも止まらなかった。
「君にだけは、俺の弱さを隠したくない」
胸が、苦しい。
「君が怪我をすると困る。捜査上ではなく、俺が困る」
先生の手が、白衣の端を軽く握った。
「君を失いたくない。これは、所見ではなく本音だ」
私は、泣きそうになった。
沢渡先生が、こんなに不器用に、必死に、言葉を差し出してくれている。
冷たい氷のように見えた人が、怖いものを抱えたまま、私の前でだけ少し溶けている。
私は一歩、先生に近づいた。
「先生が怖いままでいいです」
先生の目が揺れる。
「私が隣にいます」
「今井」
「見られないものは、私が見ます」
私は左手を、胸の前でぎゅっと握った。
「でも、私が走りすぎる時は、先生が止めてください」
先生は黙って聞いている。
その目が、もう氷だけではないと、私は知っている。
「それが、私たちの共犯関係です」
最初の共犯は、先生の弱点を秘密にすることだった。
私が先生の弱みを握り、事件のために利用した。
けれど、今は違う。
弱みを握る共犯ではなく、互いの弱さを守り合う共犯。
誰にも見せない本音を預け合う共犯。
恋人として、秘密を抱え合う共犯。
「私は、先生の秘密をこれからも守ります」
声が少し震えた。
「責任だからじゃありません。相棒だからだけでもありません」
私は息を吸った。
「先生が好きだからです」
沢渡先生の目が、わずかに見開かれた。
本当に、ほんのわずか。
でも、私にはそれで十分だった。



