推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 そんな中、オーディションは進み、現在は三次選考期間中である。
 応募総数は9,842人。
 そのうち、一次の書類選考を通過したのはわずか98人。通過率1%という狭き門に、蓮たちのオーディションにかける本気度が伺えた。
 二次の動画審査では、歌唱力やダンススキルだけでなく、自己表現やグループへの思いも評価対象とされたらしい。
 蓮たちはScorpio(スコルピオ)の未来を担う候補者を10人に絞るまでに何度も議論を重ねたという。
 そして、現在行われている三次選考。
 ここからは私たちスコッコやメディアに対して審査が公開された。三次選考はいわゆるファン投票だ。
 Scorpioのメンバーと選考通過者が合同合宿を行い、その様子が動画配信で公開されている。
 歌唱やダンスのレッスンを受けたり、メンバーと交流したりといった合宿期間の様子を垣間見ることで、候補者の人となりや魅力を知ることができる。
 三次選考の動画配信期間中、スコッコには一人一票の投票権が与えられている。三次選考開始を前に、蓮たちは「新たにメンバーになる人をスコッコに見極めて欲しい」とメッセージを公開していた。
 ただし、三次選考において候補者の顔出しは一切ない。
 既存メンバーと新メンバーの親和性。それを見極めることが三次選考の目的だからだ。
 そのため候補者のビジュアルやプロフィールは伏せられている。
 歌声やパフォーマンス、レッスンへの取り組み方などを参考に、スコッコは票を投じることになる。
 この選考内容が発表されたとき、スコッコたちは驚いた。「顔がわからないなら、好みの人を選べない」という嘆きがSNSで多くあがった。
 その反応は至極当然だ。ヲタクは大抵の場合、その容姿から推しの沼にハマっていく。「結局、見た目かよ」と言われそうだが、まぁ詰まるところそうなのだ。
 ヲタクの心理が理解できるだけに、選考方法が発表されたときは困惑した。
 だけど、メンバーがなぜこのような選考内容にしたのかもわかる気がした。
 きっと蓮は、事務所のためでも、一人のためのグループでもなく、ファンと自分たちのためのグループを作ろうとしているのだ。
 スコッコの中にはその思いを汲み取れず、選考方法に不満を持つ人もいた。
 しかしそれ以上に、顔の見えない選考という類を見ない手法を面白がる声の方が多かった。