推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

「もしかして、樹の脱退と何か関係があるの?」
 私がそう言うと、蓮の体がピクリと揺れた。
 図星だ。
 私は確信した。
 ファンを大事にする蓮は、もちろんグループのことだって大事に思っている。
 蓮のグループ愛は人一倍。そんな蓮がグループの一大事に何も思わないはずがない。
「……そんなの絶対に嫌だけど……もしかして明日のお知らせって、Scorpioの解散について?」
 私のその言葉に、成瀬さんが驚いたように目を大きくした。
 蓮は黙ったまま何も言わない。しかし、その目は鋭く私を睨みつけている。まるで手負いの獣だ。
 そんな蓮に向かって、私はさらに言葉を重ねた。
「ねぇ、蓮はそれでいいの? 納得してるの?」
 私の質問は、蓮をさらに苛立たせたようだ。
「……お前に関係ないだろ」
 蓮が冷たく言い放つ。
 その態度に成瀬さんが諫めるように声をかけた。
「おい、蓮」
 蓮は聞く耳を持たない。むすりとしたまま、私に背を向けて部屋の中へ戻ろうとする。
「待って!」
 私はベランダから身を乗り出して蓮を引き止めた。大きく息を吸うと、意を決して叫ぶ。
「Scorpioを解散させないでっ!」
 私の叫び声に、窓枠に手を掛けていた蓮の体がビクリと止まった。
 そして、ゆっくりと振り返る。
 苛立ちのこもった蓮の視線が私に向けられる。
 その視線に怯むことなく、私は蓮の目を見つめ返した。
「お願い! Scorpioを解散させないで」
 その言葉に蓮の目が一段と鋭くなった。
 彼は苛立たしげに頭を搔くと、長い足で一気に距離を詰めてくる。
 あっという間に私との間合いを詰めると、その大きな手を私の首元へ伸ばしてきた。そのままネックレスをグッと掴み上げる。
「きゃっ!?」
 突然首を引っ張られ、私は思わずバランスを崩した。
 その拍子にベランダの柵に脇腹を強くぶつける。
 痛みに顔を顰めたが、蓮はそんなことお構いなしだ。
 ネックレスを掴んだまま私を睨みつけてくる。
 ……怖い。私の知ってる蓮じゃない。
 でも……。今は、絶対に目を逸らしちゃいけない。
 蓮の形相が段々と険しくなってくる。
 彼の鋭い視線は私を責め立てているように感じた。
 そんな視線を真っ直ぐに受け止め続けていると、蓮の瞳が揺れたような気がした。
 それはほんの一瞬のこと。
 蓮は、不機嫌な顔のまま、私のネックレスから手を離した。
「お前には関係ねぇよ」
 蓮の突き放すような言葉に、思わず叫び返す。
「関係なくない! だって私、スコッコだもの!」