推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 成瀬さんの横顔を見つめながら、私の胸は甘く締め付けられる。
 推しにガチ恋したって、報われないのに。
 でも、好きになってしまったのだからしょうがない。
 私は成瀬さんに気づかれないように、そっとため息をついた。
 私たちは他愛のない話をしながら、お酒を酌み交わす。
 成瀬さんは私の話に相槌を打ちながら、時折自分の話もしてくれる。
 それがとても楽しい。まるで昔から友達だったかのように、私たちの会話は自然と弾んだ。
 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。気がつけば夜も深くなっていた。
 そろそろお開きかな、と思った時。成瀬さんが少し言いにくそうに口を開いた。
「楽しい時間に水を差すようで悪いんだけど……」
 私は首を傾げる。
 その真剣な表情に、私の心臓はドキリと跳ねた。
 えっ!? 何? もしかして愛の告白とか!?
 そんな核心なんてどこにもないのに、期待が湧き上がり胸が高鳴る。
 私はドキドキしながら成瀬さんの言葉を待った。
 しかし、成瀬さんの口から出た言葉は、私の期待を見事に裏切った。
「実はさ、うちの酒も底をついちゃったんだよね」
 成瀬さんはそう言って、手にした缶を振る。チャパチャパと間の抜けた音が私の耳に届く。
 私は思わず小さくため息を吐いた。
 なんだぁ。愛の告白じゃないのか……。って、そもそも私なんかに告白とかありえないか。
 私は慌てて笑顔を作ると、努めて明るい声を出した。
「そろそろいい時間ですし、今日はもうお開きにしましょう」
 成瀬さんは少し寂しそうに笑いながらも、「そうだね」と同意した。
 あぁ、そんな顔しないで。もっと一緒にいたいと思っちゃうから。
 私は心の中で呟く。
 自覚したばかりの想いが溢れてしまわないように、私は手すりに体を預けて夜空を見上げた。
 そよそよと吹く風が、火照った頰に気持ちいい。
 このまま時間が止まってしまえばいいのに。
 そんな事を思う私の耳に、ガサゴソと成瀬さんが片付けをする音が聞こえてきた。
 恋する乙女モードに浸りそうになっていた私は、現実へと引き戻される。
 慌てて成瀬さんに声をかけた。
「っていうか、ごめんなさい。お酒のストックがなくなったのって、私のせい……」
 成瀬さんが軽く笑う。
「気にしないで。誘ったのは俺だから」
「でも……」
 図々しくお相伴に預かったくせに、私は口籠る。
 成瀬さんはそんな私の罪悪感を振り払うように、少しおどけた口調で言う。