「いいですか? ここをこうして……」
結局、机の上に鞄を載せて私が押さえ、防犯対策をした上で、持ち手だけを彼に向けて応急処置をしてもらった。
彼は鞄の亀裂部分に買ったばかりのハンカチをあて、器用にぐるぐると巻きつけていく。
呆然とする私をよそに、彼は手早く作業を終えると、小さく「よしっ」とつぶやいた。
弱くなっていた持ち手は、ハンカチでしっかり固定されていた。
なるほど。これなら帰り道で持ち手がちぎれる心配はなさそうだ。けれど……。
私は彼をチラリと見る。
なぜ、見ず知らずの私にここまで?
無邪気な笑顔に裏はなさそうだが、人は見かけによらない。もしかして、何か企んでいるのかも。
私の視線に気がついた彼が困ったように眉を下げた。
「見栄えが悪くて嫌でした?」
「……いえ、大丈夫です……」
子犬のように見つめられ、思わずそう答えてしまう。
彼は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔に、警戒心が緩む。
……駄目だ。こんな邪気のない笑顔を疑うなんて。ここは素直に感謝しよう。
私は小さく頭を下げた。
「……ありがとうございます……」
けれど、その後が続かない。
やはり、彼の善意を完全には信じきれず、心の中がモヤモヤする。
彼はそんな私の葛藤に気づかず、にっこりと微笑んだ。
その眩しさに、私は思わず俯く。
なんて濁りのない笑顔。この下に悪意があるのだとしたら、名演技すぎる。
そう思いながらも、口をついて出たのは疑念だった。
「どうして、私にここまでしてくれるんですか?」
善意だと分かっている。けれど、真意が見えない以上、感謝より警戒が勝ってしまう。
私の問いに、彼はしばしキョトンとしたあと、小首を傾げた。まるで、そんな質問が来るとは思っていなかったかのように。
そして少しの沈黙の後、さらりと答えた。
「俺の座右の銘は『情けは人の為ならず』なんです」
結局、机の上に鞄を載せて私が押さえ、防犯対策をした上で、持ち手だけを彼に向けて応急処置をしてもらった。
彼は鞄の亀裂部分に買ったばかりのハンカチをあて、器用にぐるぐると巻きつけていく。
呆然とする私をよそに、彼は手早く作業を終えると、小さく「よしっ」とつぶやいた。
弱くなっていた持ち手は、ハンカチでしっかり固定されていた。
なるほど。これなら帰り道で持ち手がちぎれる心配はなさそうだ。けれど……。
私は彼をチラリと見る。
なぜ、見ず知らずの私にここまで?
無邪気な笑顔に裏はなさそうだが、人は見かけによらない。もしかして、何か企んでいるのかも。
私の視線に気がついた彼が困ったように眉を下げた。
「見栄えが悪くて嫌でした?」
「……いえ、大丈夫です……」
子犬のように見つめられ、思わずそう答えてしまう。
彼は嬉しそうに微笑んだ。その笑顔に、警戒心が緩む。
……駄目だ。こんな邪気のない笑顔を疑うなんて。ここは素直に感謝しよう。
私は小さく頭を下げた。
「……ありがとうございます……」
けれど、その後が続かない。
やはり、彼の善意を完全には信じきれず、心の中がモヤモヤする。
彼はそんな私の葛藤に気づかず、にっこりと微笑んだ。
その眩しさに、私は思わず俯く。
なんて濁りのない笑顔。この下に悪意があるのだとしたら、名演技すぎる。
そう思いながらも、口をついて出たのは疑念だった。
「どうして、私にここまでしてくれるんですか?」
善意だと分かっている。けれど、真意が見えない以上、感謝より警戒が勝ってしまう。
私の問いに、彼はしばしキョトンとしたあと、小首を傾げた。まるで、そんな質問が来るとは思っていなかったかのように。
そして少しの沈黙の後、さらりと答えた。
「俺の座右の銘は『情けは人の為ならず』なんです」

