なおも食い下がろうとする成瀬さんに、私はさらに言葉を重ねた。
「だから、私はこれから自室のベランダで夜風に当たりながら宅飲みをしようと思います」
意味ありげにそう提案すると、成瀬さんは目を大きく見開いて固まった。
それからすぐにプッと吹き出す。
「なるほど。じゃあ、俺もベランダで飲むことにしようかな」
笑いをこらえながらそう言った成瀬さんの笑顔は、やっぱり眩しい。
この笑顔を曇らせることはしたくない。
私は必死に理性を保った自分を称えながら、成瀬さんに笑顔を向けた。
そんなわけで、私は今、自分の部屋のベランダで麦茶を飲んでいる。
室外機の熱風が当たると外気温以上に暑くて息苦しかったので、思い切ってエアコンを消した。
思いのほか過ごしやすい。
「文明の利器も考えものね」
なんてインテリぶりながら、キンキンに冷えた麦茶を飲む。
宅飲みのはずなのになぜ麦茶なのかといえば、その理由は至極単純で、家にお酒がなかったから。
私は基本飲酒をしない。
飲めないわけではない。誘われれば飲みに行く。
でも、家に常備してまでお酒を飲みたいとは思わない。
いつ飲むかわからないお酒を常備するよりも、私は推し事にその費用を充てたい。
そんなわけで、私はキンキンに冷えた麦茶のコップを手に、ベランダの柵にもたれかかるようにして夜景を眺める。
遠くに見えるビルの明かりがキラキラと光り、とても綺麗だ。
いつもの見慣れた景色のはずなのに、今夜はどこか違って見える。
その原因はただ一つ。
私はそっと隣に視線を向ける。
そこには、私の部屋とお隣を仕切る壁がある。
そして、その壁一枚隔てた向こう側には私の推しがいる。
そう思うと、なんだかドキドキする。
ニマニマと笑いながら再び夜景を堪能していると、隣の部屋の窓が開く音がした。
続けて「暑っ」という声がして、私は思わず吹き出す。
「室外機のせいですよ。エアコン止めると、案外大丈夫ですよ」
しきり壁越しに成瀬さんに話しかける。
するとすぐに成瀬さんの部屋の室外機の唸り声が止んだ。ついで、しきり壁の下の隙間から生温い風が送られてきた。
「確かに、エアコンを切るだけでも違いますね。でも、まだ暑いんで扇風機を持ってきちゃいました」
そんな成瀬さんの声と共に、美味しそうな匂いが隣から漂ってくる。
「いい匂い。何の匂いですか?」
思わず食い意地の張った質問をしてしまった。
「だから、私はこれから自室のベランダで夜風に当たりながら宅飲みをしようと思います」
意味ありげにそう提案すると、成瀬さんは目を大きく見開いて固まった。
それからすぐにプッと吹き出す。
「なるほど。じゃあ、俺もベランダで飲むことにしようかな」
笑いをこらえながらそう言った成瀬さんの笑顔は、やっぱり眩しい。
この笑顔を曇らせることはしたくない。
私は必死に理性を保った自分を称えながら、成瀬さんに笑顔を向けた。
そんなわけで、私は今、自分の部屋のベランダで麦茶を飲んでいる。
室外機の熱風が当たると外気温以上に暑くて息苦しかったので、思い切ってエアコンを消した。
思いのほか過ごしやすい。
「文明の利器も考えものね」
なんてインテリぶりながら、キンキンに冷えた麦茶を飲む。
宅飲みのはずなのになぜ麦茶なのかといえば、その理由は至極単純で、家にお酒がなかったから。
私は基本飲酒をしない。
飲めないわけではない。誘われれば飲みに行く。
でも、家に常備してまでお酒を飲みたいとは思わない。
いつ飲むかわからないお酒を常備するよりも、私は推し事にその費用を充てたい。
そんなわけで、私はキンキンに冷えた麦茶のコップを手に、ベランダの柵にもたれかかるようにして夜景を眺める。
遠くに見えるビルの明かりがキラキラと光り、とても綺麗だ。
いつもの見慣れた景色のはずなのに、今夜はどこか違って見える。
その原因はただ一つ。
私はそっと隣に視線を向ける。
そこには、私の部屋とお隣を仕切る壁がある。
そして、その壁一枚隔てた向こう側には私の推しがいる。
そう思うと、なんだかドキドキする。
ニマニマと笑いながら再び夜景を堪能していると、隣の部屋の窓が開く音がした。
続けて「暑っ」という声がして、私は思わず吹き出す。
「室外機のせいですよ。エアコン止めると、案外大丈夫ですよ」
しきり壁越しに成瀬さんに話しかける。
するとすぐに成瀬さんの部屋の室外機の唸り声が止んだ。ついで、しきり壁の下の隙間から生温い風が送られてきた。
「確かに、エアコンを切るだけでも違いますね。でも、まだ暑いんで扇風機を持ってきちゃいました」
そんな成瀬さんの声と共に、美味しそうな匂いが隣から漂ってくる。
「いい匂い。何の匂いですか?」
思わず食い意地の張った質問をしてしまった。

