「違います! 成瀬さんが頼りないなんて思っていません。ただ……」
「ただ?」
「……今は、特に愚痴とかはないんですよ。新しい仕事にも慣れてきましたし。これと言って」
少し眉を下げてそう言えば、成瀬さんは驚いたように大きく目を見開いた。
私は「信じてください」と言わんばかりにニコリと微笑む。
すると成瀬さんはようやくホッとしたように表情を和らげた。
「でも、だったらどうしてあんなこと……?」
「あんなこと?」
「ベランダから身を乗り出していたでしょう? 俺、てっきり……いろいろと思い悩むことがあって、苦しくなって、それで……」
成瀬さんは語尾を濁す。
どうやら、私がベランダで手を伸ばしていたところを見られていたらしい。
それを成瀬さんは自殺行為だと勘違いして、慌てて駆けつけてくれたようだ。
確かに傍から見たらそう見えたかもしれない。
私は慌てて誤解を解こうと口を開く。
「ご、誤解です。私はちょっと手を伸ばしてみただけで、そんなつもりはこれっぽっちもありません。ご心配をお掛けしました。すみません」
勢いよく頭を下げると、成瀬さんもバツの悪そうな表情で頬をポリポリとかいた。
「いや、俺の早とちりだったみたいで。大騒ぎして、こっちこそごめん」
それからしばらく、お互いに「すみません」と「ごめん」を繰り返す。
そのうち、マンションの廊下でしゃがみ込んで謝罪し合っている現状が何だかおかしくなってしまい、私は吹き出した。
成瀬さんはキョトンとした後、つられたように笑う。
二人してケタケタと笑っていると、緊張から解き放たれたせいか、突然グゥ〜とお腹が鳴る音が響いた。
それも二つ同時に。
あまりに緊張感のないその音に、私たちは顔を見合わせると、また吹き出す。
ひとしきり笑った後、成瀬さんは私の手を引いて立たせると、無邪気に口を開いた。
「はぁ〜。お腹空いた。その様子だと石川さんも夕飯まだですよね? どうですか、これから」
成瀬さんはクイッとお酒を飲む仕草をしてみせる。
あ、その仕草もかっこいい。
思わず見惚れた途端、私の脳内でアラートが鳴り響いた。
ダメ!
嬉しいお誘いだが、この展開はまずい。
私なんかと一緒にいるところを週刊誌にでも撮られたら、成瀬さんの仕事に影響が出てしまう。
私は慌てて成瀬さんのお誘いを断る。
「週刊誌に撮られたら大変ですから」
「ただ?」
「……今は、特に愚痴とかはないんですよ。新しい仕事にも慣れてきましたし。これと言って」
少し眉を下げてそう言えば、成瀬さんは驚いたように大きく目を見開いた。
私は「信じてください」と言わんばかりにニコリと微笑む。
すると成瀬さんはようやくホッとしたように表情を和らげた。
「でも、だったらどうしてあんなこと……?」
「あんなこと?」
「ベランダから身を乗り出していたでしょう? 俺、てっきり……いろいろと思い悩むことがあって、苦しくなって、それで……」
成瀬さんは語尾を濁す。
どうやら、私がベランダで手を伸ばしていたところを見られていたらしい。
それを成瀬さんは自殺行為だと勘違いして、慌てて駆けつけてくれたようだ。
確かに傍から見たらそう見えたかもしれない。
私は慌てて誤解を解こうと口を開く。
「ご、誤解です。私はちょっと手を伸ばしてみただけで、そんなつもりはこれっぽっちもありません。ご心配をお掛けしました。すみません」
勢いよく頭を下げると、成瀬さんもバツの悪そうな表情で頬をポリポリとかいた。
「いや、俺の早とちりだったみたいで。大騒ぎして、こっちこそごめん」
それからしばらく、お互いに「すみません」と「ごめん」を繰り返す。
そのうち、マンションの廊下でしゃがみ込んで謝罪し合っている現状が何だかおかしくなってしまい、私は吹き出した。
成瀬さんはキョトンとした後、つられたように笑う。
二人してケタケタと笑っていると、緊張から解き放たれたせいか、突然グゥ〜とお腹が鳴る音が響いた。
それも二つ同時に。
あまりに緊張感のないその音に、私たちは顔を見合わせると、また吹き出す。
ひとしきり笑った後、成瀬さんは私の手を引いて立たせると、無邪気に口を開いた。
「はぁ〜。お腹空いた。その様子だと石川さんも夕飯まだですよね? どうですか、これから」
成瀬さんはクイッとお酒を飲む仕草をしてみせる。
あ、その仕草もかっこいい。
思わず見惚れた途端、私の脳内でアラートが鳴り響いた。
ダメ!
嬉しいお誘いだが、この展開はまずい。
私なんかと一緒にいるところを週刊誌にでも撮られたら、成瀬さんの仕事に影響が出てしまう。
私は慌てて成瀬さんのお誘いを断る。
「週刊誌に撮られたら大変ですから」

