推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 そう言って、成瀬さんはトンと私の肩に頭を預けた。
 あまりにも突然の展開に、私はただただ呆然とするばかり。
 ……なにこれ? どういう状況?
 自分の置かれた状況に思考がまったく追いつかず、私はパニックを通り越して頭の中が真っ白になる。
 肩に乗せられた成瀬さんの頭の重さを感じながら、ただあわあわと動揺するばかり。
 これは夢? 夢なら覚めて! いや、覚めないで!!
 処理しきれない感情がぐるぐると渦巻く。
 どれくらいそうしていただろう。
 不意に肩が軽くなる。
 成瀬さんの頭が離れたと思ったら、今度は私の顔を覗き込んできた。
 その距離の近さに思わず後ずさりそうになる。しかし、肩をがっちり掴まれているので、それ以上は下がれない。
 ち、……近いです!
 あまりの近さに視線が泳ぐ。
 成瀬さんファンのみなさん、ごめんなさい。でも、これは不可抗力です。
 思考回路がパンク寸前の私は、誰に向けるでもなく謝罪を心の中で繰り返す。
 そんな私の動揺など気にする様子もなく、成瀬さんはさらに顔を近づけてくる。
 ……お願い、これ以上は来ないで! これ以上近づかれたら、私の心臓が止まる……!
 心臓がバクバクと大きな音を立てている。
 もうすでに許容量はいっぱいいっぱいだ。
 そんな私の心の声などお構いなしに、成瀬さんは真剣な眼差しで、私の体を頭から足先まで見回す。
 納得いくまで私を検分した成瀬さんからようやく解放された時、私は安堵のため息をこぼした。
 よかった。心臓が止まる前に、無事に生還できた。
 疲労困憊な私は、その場にへなへなと座り込む。
 すると、私と目線を合わせるように成瀬さんも隣にしゃがみ込んだ。
 ……まだ何か? もう私のライフはゼロですよ?
 そんなことを思いながら成瀬さんへ視線を向けると、心配そうに私を見る成瀬さんの視線とぶつかった。
「あの……」
 あたふたとする私をじっと見詰めたまま、成瀬さんが口を開く。
「どうしてあんなことするんですか!」
 成瀬さんから投げかけられた言葉の意味が理解できず、私は目をパチクリさせる。
 そんな私に構うことなく、成瀬さんは言葉を続ける。
「何か辛いことがあったんですか? 俺でよければ話を聞きます。……話を聞くことくらいしかできないけど……」
 かつてないほど至近距離で見る成瀬さんの顔。視線はどうしても離れない。もはや本能レベルで釘付けになっている。
 ……あ、まつ毛長い。いいな。