推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 ライブでの蓮はどんな感じだったか、由紀さんに聞いてみようかな?
 そう思ってスマホを握り直したときだった。
“千紘ちゃん、今電話いい?”
 そんなメッセージが由紀さんから届いた。
 私は“大丈夫です”とだけ返信する。
 すぐに着信があり、画面をスワイプして電話に出ると、テンション高めの由紀さんの声が耳に入ってきた。そのテンションの高さに思わず圧倒される。
『ハロー千紘ちゃん。メッセ打つの面倒くさくなって電話しちゃったけど、大丈夫だった?』
「……大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
『いや~、何事もなく無事にライブが終わったことが嬉しくてさ』
「本当ですね。どこからあんな情報が出てきたんでしょう?」
 由紀さんが電話の向こうでうーんと唸る声が聞こえる。
『わかんない。でも開始前は結構周りでもその話で持ち切りだったんだよ』
「はた迷惑な噂でしたね。そのせいで私、今回のライブは上の空でしたよ……」
 私が溜息交じりにそう話すと、由紀さんが「えー」と驚いた声を上げる。
『もしかして、樹と蓮のユニット、見逃した?』
 電話口から申し訳なさそうな由紀さんの声がする。
「いえ、一応観てはいたんですけど……」
 私の返答に、電話の向こうで由紀さんのテンションが一気に上がったのがわかった。
『良かった~。まぁ、アレは熱かったからね。さすがに観ちゃうよね』
「ずっと、スコッコの間で伝説って言われてた曲ですからね」
 私の淡白な反応に、由紀さんが少しじれったそうに話を続ける。
『それもそうだけどさ、あのスリーショットは懐かしすぎるでしょ。まさかまた見られるとは思わなかったもん』
「え?」
 スリーショットとは、成瀬さんと蓮たちが肩を組んでいたあの場面のことだろうか?
 懐かしすぎる? また見られた? それは一体どういう意味だろう。
 私の反応に、電話の向こうでも少し間があった。
『あっ! もしかして千紘ちゃん、なるちゃんのこと知らない?』
 由紀さんのその言葉に、私はもう一度「え?」と聞き返す。
「なるちゃん?」
 私の鈍い反応に電話の向こうで唸る声がする。そして、少し間を置いてから由紀さんが話を続けた。
『そっかぁ。千紘ちゃんは知らないかぁ。この衝撃を分かち合いたかったんだけどなぁ』
 由紀さんの残念そうな声が電話口から洩れた。そんな由紀さんにはお構いなしに、私は少し食い気味に口を開く。
「あ、あの。なるちゃんって言うのは、蓮たちのユニットの時に一人でバックを務めていた人ですか?」