推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 画面の中で、Scorpio(スコルピオ)のメンバーが今回のライブを振り返っている。どこどこの会場でこんな失敗をした、あの会場のケータリング料理が美味しかったなど、和気あいあいとした雰囲気で話が進む。
 だけど私は、そんなメンバーの話にあまり集中できていない。
 成瀬さんのあのダンスが頭から離れない。
 彼の姿が脳内で繰り返し再生される。
 もっと……近くで見たいな。画面越しではなく、直接見てみたい。
 そんな気持ちが、私の中で急速に膨れ上がる。
 私の思考が成瀬さんに占拠されている間も、MCは進んでいく。地方で食べた物の話題から、メンバーのデビュー秘話へ。
 涼と優磨がデビューの話を聞いたのは、名古屋での仕事を終えて手羽先を食べていた時だったそうだ。
 思い出の手羽先が今回のライブのケータリングとして用意されていて感慨深くなった涼は、思わず手羽先を食べながら泣いたというエピソードを披露する。
「だけど、手羽先のタレと鼻水で顔ぐちゃぐちゃにして泣くから、周りが引いちゃったんだよね」
「おい、引くとかいうなよ〜」
 優磨の言葉に涼が泣き真似をした。そんな二人の様子に会場中から笑いが起きる。
 この二人は、いつもこうやって仲の良いところを見せてくれる。
 私の推しは蓮だけれど、この二人もScorpioになくてはならないメンバーだ。
 ステージ上で繰り広げられる二人の寸劇はいつものこと。
 成瀬さんのことで頭がいっぱいだった私も、二人のコントのような掛け合いについ耳を傾け、思わず笑ってしまった。
 MCが一段落すると、ライブの後半戦が始まる。アップテンポなナンバーの怒涛のメドレーで、再びスコッコたちのボルテージを上げていく。
 MCで一息ついていた私も、再び目を皿のようにして画面の中に彼の姿を探す。
 これまでのことから、彼は蓮か樹の近くにいるのではと予想をつけて探すが、その姿はなかなか見つからない。
 全ての曲に出るとは限らないか……。
 私は必死に目を凝らし、彼の姿を探す。けれど、私の視界にその姿はなかなか映り込んでこない。
 まさか、さっきのダンスで成瀬さんの出番は終わりなの?
 彼を探しているうちに、あっという間にライブはラストナンバーを迎えてしまった。
 最後の曲にも成瀬さんの姿はなく、私は落胆する。
 Scorpioのメンバーではないのだから、当然といえば当然のことなのだが、結局アンコールにも成瀬さんの姿はなかった。