推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 何人ものダンサーが自己主張するようにステージ上で飛んだり跳ねたり、ステップを踏んだり。
 その中に、格段に動きにキレのある人を見つけた。
 あの人だっ!
 直感でそう思った。
 スラッとしていて、しなやかで無駄のない動き。先ほど見たダンサーの動きそのものだった。
 私はその人を目で追う。
 樹のステージの時よりは舞台が明るいので、その姿を追うことはできる。
 私は必死にその姿を追うけれど、それを阻むようにすぐにカメラの視界が外れてしまう。
 あぁ……。もっとはっきり顔が見たいのに……! ちゃんと映して。
 そもそも彼はバックダンサーなので、ズームアップされることなどありえない。
 それなのに私は必死に念を送る。
 そんな私の思いが届いたのか、目当ての人物が蓮の傍へと移動した。
 チャンスだっ! 蓮の近くならカメラに映るはず。
 そう思ったのに、最大の刺客に私の出鼻は挫かれた。
 アングル的にしっかり蓮の陰に入ってしまい、彼の姿を捉えきれない。
 もう! 蓮、どうして今、カメラに寄るのっ!
 推しのアップに、 私は心の中で悪態をつく。
 せっかくあのダンサーを間近で確認できるチャンスだったのに。
 蓮が邪魔だと思ってしまった。いつもの私なら、推しのアップなんて発狂する場面なのに。
 もどかしい思いで画面を見つめていたら、いつの間にか蓮のソロ曲が終わりを迎えていた。
 バックダンサーである彼は、私にその素顔を確認させることなく、曲の終了とともにステージから捌けていった。
「も~蓮……」
 私は天を仰いだ。
 落胆する私をよそに、画面の中では、涼×優磨のコンビがステージに立っている。どうやら次は二人のユニット曲のようだ。
 彼らのバックダンサーは事務所の研究生の子たちが務めることが多い。
 この曲であの人が出てくることはないだろう。
 私は、もうすっかりあのダンサーのことが頭から離れなくなってしまっていた。
 あまり期待せず、ライブに目を向ける。案の定、あのダンサーは舞台に出てこなかった。
 Scorpio(スコルピオ)のライブではいつも、グループ曲、ソロ曲、ユニット曲、そしてグループ曲という構成で、二時間半のライブが繰り広げられる。
 それを把握している私は、次の出番は蓮×樹かと無意識に考え、はたと気がついた。
 あのダンサーは、樹のソロと蓮のソロでバックを務めていたのだ。今日のライブで、涼と優磨のステージにはついていない。
 だとしたら、次の曲には出てくるかも……。
 そんな期待を胸に、私は画面に注目する。