推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

 スラリとした細身の身体。明るめの髪色。
 黒い衣装を纏っているせいで、一瞬にして舞台の闇に溶けてしまったけれど、その姿に私は思わず息を飲んだ。
 まさか、あの人は……。
 私の心臓がドクンと大きく脈打つ。
 すぐにまた画面の中に彼の姿を探す。だけど、もうステージ上にその姿はない。
 ステージの照明は先ほどと打って変わって明るく、次の歌い手である涼のパフォーマンスが始まっている。
 スコッコたちの歓声と熱気をかき混ぜるように、小さなバックダンサーたちを引きつれた涼が元気に会場中を駆け巡る。
 声を弾ませながら楽しそうに歌う涼に、スコッコたちは全力でペンライトを振っている。
 盛り上がる会場とは裏腹に、私の頭の中はさっきのダンサーのことでいっぱいだった。
 なんで成瀬さんが?
 先ほどまでのステージは暗かったし、カメラも彼に焦点を当てていたわけではないので、はっきりとは見えなかった。
 確証はない。一瞬しか見えなかったので、私の見間違いかもしれない。
 だけど……。
 ほんの一瞬カメラ越しに映っただけなのに、私には、どうしてもあのダンサーが成瀬さんだったのではないかと思えてしまう。
 あの人が本当に成瀬さんだったのかどうか、それを確かめたい。
 私は画面を食い入るように見続ける。
 心臓が早鐘を打つようにバクバクと音を立てている。
 だけど、涼のパフォーマンスの間にその真偽を確かめることはできなかった。
 小さなバックダンサーたちと涼が捌けると、次は優磨のソロ。
 しかし、曲が変わってもあのダンサーはステージ上に現れない。
 私の心臓はずっとバクバクと音を立てている。
 バックダンサーが気になって、優磨の歌が入ってこない。
 画面に齧り付くようにして、あのダンサーが再び映る瞬間を待つ。
 本当に成瀬さんだったとしたら、どうしてScorpio(スコルピオ)のライブに出ているの?
 頭の中は大混乱だった。
 私はもう、スコッコたちのようにペンライトを振ることも忘れて、じっと画面の中のステージを見つめていた。
 優磨のパフォーマンスが終わり、蓮の出番になる。
 いつもの私なら画面越しだろうがお構いなしに、黄色い歓声を飛ばす。
 だけど、今日は蓮の歌声も耳に入らない。
 お願い……。出てきて……!
 祈るような気持ちであのダンサーの影を探す。
 画面を見つめていると、舞台袖からヒップホップの格好をしたダンサーたちが、軽快なダンスをしながら現れた。
 私は瞬きもせずに画面を凝視する。