「とは言っても、まだ動かしてないんですよ。最近忙しくて、家には寝に帰るだけで」
「それはもったいないですね。一番初めに観る作品、もう決めてるんですか?」
何気なく尋ねると、成瀬さんはどこか気まずそうに視線をさまよわせた。
え? その反応……まさか、エッチなの観る予定とか?
思わずじっと見つめてしまう。
視線に気づいた成瀬さんが観念したように口を開いた。
「随分前の映画なんですが……『ZERO TO HERO』って知ってますか?」
知ってるも何も、私は思わず声を上げた。
「もちろん知ってます! 蓮の映画デビュー作ですから」
それは、私の推し・影山蓮がスクリーンデビューした作品。
当時の蓮はまだ研究生で、知名度もなく、主な活動は先輩のバックダンサーや番組の賑やかし。中学生だった私は、もっと活躍してほしいと願っていたけれど、どう応援すればいいか分からなかった。
そんな時、先輩アイドルが主演の映画に蓮も出演すると知り、公開日を指折り数えて待った。
初日は胸を高鳴らせて映画館へ。
二時間の映画で蓮の登場はトータル十五分ほど。主人公の後ろにちらっと映る程度で、セリフは一言だけ。
それでも、スクリーンに映った瞬間、私は嬉しくて泣きそうになった。
今では主演作も増え、昔の作品を見返すことは少なくなったけど、あの頃は何度も観た。何度観ても飽きなかった。
そんな思い出の映画のタイトルが、彼の口から出るなんて……。
興奮する私に、成瀬さんは小さく笑った。
「やっぱりご存じでしたか。さすがですね」
私は夢中で頷く。
「成瀬さんは、なぜあの映画を?」
もう十年以上も前の作品。私は蓮目当てで何度も観たけれど、世間的には大ヒットとは言い難かった。
成瀬さんは少し照れたように微笑み、窓の外へ視線を向けた。
その視線につられて、私も車窓を見やる。
電車が駅に近づき、スピードを落とす。車内に次の駅名を告げるアナウンスが流れた。
「それはもったいないですね。一番初めに観る作品、もう決めてるんですか?」
何気なく尋ねると、成瀬さんはどこか気まずそうに視線をさまよわせた。
え? その反応……まさか、エッチなの観る予定とか?
思わずじっと見つめてしまう。
視線に気づいた成瀬さんが観念したように口を開いた。
「随分前の映画なんですが……『ZERO TO HERO』って知ってますか?」
知ってるも何も、私は思わず声を上げた。
「もちろん知ってます! 蓮の映画デビュー作ですから」
それは、私の推し・影山蓮がスクリーンデビューした作品。
当時の蓮はまだ研究生で、知名度もなく、主な活動は先輩のバックダンサーや番組の賑やかし。中学生だった私は、もっと活躍してほしいと願っていたけれど、どう応援すればいいか分からなかった。
そんな時、先輩アイドルが主演の映画に蓮も出演すると知り、公開日を指折り数えて待った。
初日は胸を高鳴らせて映画館へ。
二時間の映画で蓮の登場はトータル十五分ほど。主人公の後ろにちらっと映る程度で、セリフは一言だけ。
それでも、スクリーンに映った瞬間、私は嬉しくて泣きそうになった。
今では主演作も増え、昔の作品を見返すことは少なくなったけど、あの頃は何度も観た。何度観ても飽きなかった。
そんな思い出の映画のタイトルが、彼の口から出るなんて……。
興奮する私に、成瀬さんは小さく笑った。
「やっぱりご存じでしたか。さすがですね」
私は夢中で頷く。
「成瀬さんは、なぜあの映画を?」
もう十年以上も前の作品。私は蓮目当てで何度も観たけれど、世間的には大ヒットとは言い難かった。
成瀬さんは少し照れたように微笑み、窓の外へ視線を向けた。
その視線につられて、私も車窓を見やる。
電車が駅に近づき、スピードを落とす。車内に次の駅名を告げるアナウンスが流れた。

