拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

コートの中と、コートの外

悠矢高校生になって、中学同様に
バスケ部に入った。

理由は単純だった。

走るのが好きで、
跳ぶのが好きで、
点を取る瞬間が、
何より気持ちよかった。

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最初から目立った。

身体能力。
度胸。
勝負所で逃げない性格。

監督は、
すぐに使い始めた。

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「エース候補だな」

その言葉に、
悠矢は笑った。

喧嘩と同じだ。

前に出る。
引かない。
背中は見せない。

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コートの上では、
迷いがなかった。

パスをもらう。
切り込む。
跳ぶ。

歓声が上がる。

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一方で、
愁也はバスケ部に入らなかった。

誘われなかったわけじゃない。
実力がなかったわけでもない。

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「入らないの?」

悠矢が聞いた時、
愁也は少しだけ困った顔をした。

「時間がな」

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放課後。
愁也は、
駅前にいた。

隣には、
彼女がいる。

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笑って、
並んで歩く。

手を繋ぐわけでもない。
派手なこともしない。

でも、
愁也はそこにいた。

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試合の日。

悠矢は、
汗だくでコートに立つ。

残り数秒。
同点。

ボールが回ってくる。

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迷わず、
打つ。

ブザー。
歓声。

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その瞬間、
ふと客席を見る。

愁也はいない。

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代わりに、
夜にメッセージが来る。

勝ったな
おめでとう

短い。

でも、
それで十分だった。

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悠矢は思う。

自分は、
コートで生きている。

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愁也は、
別の場所で生きている。

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それでも、
夜になれば合流する。

我捨楽の時間。

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「エース様じゃん」

誰かが言うと、
愁也は笑って言う。

「前に出るの、
 好きだよな」

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悠矢は、
少し照れて答える。

「後ろにいるやつが、
 信用できるからな」

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コートの中と、
コートの外。

選んだ道は、
正反対だった。

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でも、
立ち位置は同じだった。

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前に立つ悠矢。
後ろを守る愁也。

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バスケでも、
喧嘩でも、
人生でも。

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未来の彼女は、
この章を読んで思う。

「二人は、
 同じ場所を見てたんだ」

違う道を選んでも。