拳よりも、強いもの〜俺たちはいつも『曇天』の中に光を掴んだ

高校で、初めてぶつかった。

高校に入って、
二人は同じ校舎にいた。

それだけで、
少し距離が縮まった気がした。

だが、
同時に気づいてしまった。

――こいつとは、
同じじゃない。

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悠矢は、
相変わらず前に出るタイプだった。

名前が知られるのも早く、
問題になるのも早い。

中学の頃より、
少しだけ頭は冷えていたが、
根本は変わらない。

引かない。
迷わない。
考えるより先に体が動く。

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愁也は、
まるで逆だった。

成績は良く、
教師からの評価も高い。

必要以上に目立たない。
でも、
誰よりも状況を見ている。

危ない空気を察知すると、
一歩先に動く。

喧嘩を避けるために。
あるいは、
避けられないなら、
最小で終わらせるために。

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それが、
衝突の原因になった。

⸻

ある日の放課後。
他校の連中が校門前に現れた。

噂はすぐに広がる。

「来てるぞ」
「中学の時の因縁らしい」

悠矢は、
何も言わずに立ち上がった。

それを見て、
愁也が言う。

「行くな」

低い声だった。

「今じゃない」

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悠矢は、
足を止めなかった。

「逃げるのか?」

振り返りもせずに言う。

愁也の眉が、
ほんの少しだけ動いた。

「違う」

「勝ち方がある」

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悠矢は、
そこで初めて振り返った。

「勝ち方?」

その言葉が、
気に障った。

「喧嘩に、
 勝ち方もクソもあるかよ」

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二人の視線がぶつかる。

空気が、張りつめた。

周りの生徒たちは、
どちらも止められなかった。

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愁也が言う。

「今出たら、
 学校ごと潰れる」

「停学で済まない」

「仲間も巻き込まれる」

一つずつ、
冷静に並べる。

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悠矢は、
拳を握った。

「だから何だ」

「目の前でナメられて、
 黙ってろって?」

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その瞬間、
愁也の声が少しだけ強くなる。

「俺は、
 無駄に失うのが嫌なんだ」

その言葉に、
悠矢は初めて怯んだ。

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「……お前、
 怖いのか?」

悠矢の問いは、
挑発だった。

愁也は、
即答した。

「怖い」

一切、迷いがない。

「だから、
 考える」

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その答えが、
悠矢の胸を打った。

怖いと言い切る。
それでも引かない。

それは、
中学時代の自分には
なかった強さだった。

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その日は、
衝突しなかった。

悠矢は、
結局校門を出なかった。

納得したわけじゃない。
ただ、
足が止まっただけだ。

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帰り道、
二人は並んで歩いた。

沈黙が長い。

先に口を開いたのは、
悠矢だった。

「……ムカつくな」

「どこが」

「全部」

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愁也は、
少しだけ笑った。

「それでいい」

「ぶつからない相棒は、
 信用できない」

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その言葉で、
悠矢は理解する。

こいつは、
自分を止めたいんじゃない。

無駄に失わせたくないだけだ。

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高校で、
初めてぶつかった日。

この時、
二人はまだ噛み合っていない。

でも――

歯車が、
同じ方向を向き始めた夜だった。