色褪せて、着色して。~黒薔薇編~

「僕たちは、ご存知の通り。騎士になれなかった落ちこぼれです。家族のもとに帰ることが許されず、路頭に迷うところをユキ様に救われた」
 今度は、ゆっくりとした口調でセリくんが語りだす。
「秘密の館の人達はそりゃあ、親切にしてくれましたよ。でも、どこかで僕たちのことを可哀想って思っているのがわかったというか…」
「うん。というか、カイなんて皆。未だに接し方がわかってないと思う」
 セリくんが頭をポリポリと掻いた。
「枠にはめられた人生を…なんというか、自分の意見を言うきっかけをくれたのはマヒル様たちですから」
 セリくんがうつむいたと思えば、こっちを見た。
「僕たちは、年相応に生きることが許されなくて。家族の為に働かなきゃいけなくて…。将来なんて見えなかった。どうしていいのかわからなかったんですよ」
「…そうなの?」
 セリくんは家族のことを一切話さない。
 初めて彼の口から出た「家族」という言葉に驚く。
「初めてバニラさんの作ってくれた料理を食べたとき、衝撃を覚えたんですよ」
 セリくんがバニラを見る。
「僕が知らない料理がこの世には沢山あるんだって。そしたら、今の生活がバカバカしくなったというか」
 バニラは驚いた表情を見せたけど、ニコニコと笑う。
「まずは、城下町の食堂で見習いとして働きます。そうしたら、世界を巡って美味しいものを食べたい」
「セリ様なら、立派な料理人になりますわ」
 嬉しそうに話すバニラを見ているうちに。
 あのバーベキューの出来事が。
 本当に、遠い昔のように思えてきた。
「僕は、マヒル様たちの家造りを手伝っていくうちに、こんな面白い仕事ないなってことに気づいちゃって。ジョイさんに相談したら、お父様のもとで修行することになりました」
 ジョイさんは、彼らにとって頼れるアニキといった存在の人だ。
 国家騎士だけど、秘密の館で働くセリくんたちの相手をよくしてくている。
 ジョイさんのお父さんは海外の人だそうだけれど。
 大工としてこの国に永住することになった。
 城下町で、大工さんとして働いていると言っていたから。
 その繋がりで、キキョウくんが働くということだ。

「キキョウ様は手先が器用ですから、良い大工になりますわ」
 すかさず、バニラが褒める。
 2人は褒められて嬉しそうにデレデレと笑った。

「あの、スズメさんは勤務時間って夜ですか?」
 セリくんがトペニに尋ねる。
 すっかりと気配を消して忘れていたトペニを見て、私はビクッと肩が震えた。
「おう。そうだな。当分は夜だな」
「じゃあ、また時間作って挨拶に来ますね」
 セリくんがうんうんと頷く。
「えっと、マヒル様。太陽様は・・・」
 タイヨウ…という言葉に私は「うぅっ…」と今度は思いっきりよろけた。

「え、いや。あのすいません」
 とっさに謝るキキョウくんに。
「アハハハ」とトペニが笑う。

「太陽様は、お仕事で当分はお帰りになられませんわ」
 バニラがきっぱりと言い切ると。
 セリくんとキキョウくんは、顔を見合わせて「そっかー」と言った。