色褪せて、着色して。~黒薔薇編~

 サンゴさんは、いつも愛用しているカップを置くと。
 私をじっと見た。

「俺とカイはここから出て行くことにした」

「ん?」
 聴き間違いじゃないかと思った。
 出て行くと聞こえたような・・・
「サンゴ様とカイ様がですか?」
 後ろに座っていたバニラがかかさず、突っ込んだ。

 そんなわけない。
 絶対に聞き間違いだと思いながらも、両手に汗をかいてしまう。
「そんな驚いた顔するなよ」
 よっぽど凄い表情をしていたのか、サンゴさんが大声を出す。
「出て行くってどういうことですか? ここがサンゴさんの家でしょう」
 軽くパニックになっていた。
 自分が何を言っているのかわからなくなる。

 サンゴさんは元国家騎士。
 戦争で片腕をなくし、引退した後は。
 王家の領地で畑をやりながら暮らしていた。
 何故、そんなことを言うのだろうか。
「お姫さんのところに、ナズナたちが挨拶に来ただろ。カイも今年、出て行かなきゃいけねえ訳だからさ。良い機会だから俺も出て行くことにした」
「……」
 ショックで声が出なかった。
「まあ、実家は弟が継いでいるからな。騎士時代に稼いでるから金には困らないし。実家の領地の隅でカイと暮らすわ」
「…だったら、ここで暮らせばいいじゃないですか」
 低い声で言うと。
 カイくんが「大丈夫?」とスケッチブックに書いて見せてきた。
「まあ、聞けよ。別に俺はここでの生活が嫌で出て行くって言っているわけじゃねえんだから」
 私が怒っていると思ったらしく、サンゴさんは笑って私をなだめる。
「妹たちから、連絡があってな。女の子2人を保護したんだってさ」