色褪せて、着色して。~黒薔薇編~

 耳元で言われ、「えっ!?」と声を漏らしてしまい。
 慌てて「すいません」と謝る。
 ローズ様からは甘い花の香りがする。
 目が合うと、思っていた以上の距離の近さだ。

「ルピナス様にお会いすることは…」
「……」
 ローズ様は黙り込んだ。
「何があってもルピナスを嫌いにならないでほしい。悪いのは俺だから」
「どういう意味ですか」
 訊いたところで。
 答えてはくれない。
 ローズ様は、そっと手を挙げたかと思うと。
 私の頬に触れた。
 顔が近い。
 何で、触ってくるんだろうか。
 近い、近い、近い・・・

 ゆっくりとローズ様の顔が接近してくる。
 これは、何。
 もしかして、ローズ様って目が悪い?
 恥ずかしさのあまり目を閉じる。

「陛下、会議のお時間です」

 扉越しに聞こえた声に。
 ローズ様は素早く手を引っ込めた。
 …今、何をしようとしたんだ。
 この人。

「長時間、2人きりにならないほうがいいな」
「…そうですね」
 意味深な言葉に心臓のドキドキが止まらない。
 今、絶対にキスしようとしていたのでは?
 勘違い?
 勘違いであってほしい。

 ローズ様は立ち上がる。
「今、行くから待ってろ」
 扉に向かって大声で言った。

「あと、一つ。言い忘れてた」
 ローズ様は複雑そうな表情で言ってのけた。