色褪せて、着色して。~黒薔薇編~

 王族からの呼び出しというのは、本当にロクなことがない。
 はじまりはいつだって、クリス様で。(この前はジャック様だったけど)
 クリス様は、国家騎士団の頭脳班にも肉体班にも属さない中立な立場なそうだ。
 派閥に入っていない騎士というのは。
 今のところ、クリス様しか知らない。

 澄んだ茶色い目に。
 襟元まで伸びた茶髪はパーマをかけているのか。
 遊び人のような…言ってしまえばチャラ男のような雰囲気だ。
 まあ…モテるっていうのはわかる。
 クリス様の婚約者であるサクラ様がデレるのもわかる。
 独り占めしたいだろうに。
 理由があるのか、サクラ様は私の祖国であるスカジオン王国で暮らしている。

「あの。どこか具合が悪いのかな?」
 馬車に乗って、宮殿までの移動の間というのは。
 2人きりで、非常に気まずい。
 クリス様の第一声に私は扇子で顔を隠してしまう。
 そして、「タメ口かい」と心の中で呟く。

「いや。ごめん。女性に失礼だったね」
 最近、泣きっぱなしだったせいで。
 ボロボロだったせいか。
 化粧が濃いのがいけなかったのかもしれない。
 そもそも、具合を悪くさせる原因を作っているのは、どこのどいつだ!!!

 馬車は意地悪なくらい。
 ゆっくりと動いているように感じた。
 私は扇子をずらして、クリス様を見る。
「あの、ルピナス様にお会いすることは出来ないのでしょうか?」
「・・・・・・」
「クリス様? 聴いてます?」
 窓の外を眺めていたクリス様は。
「え、俺?」
 と驚いている。

 馬車には2人しかいない。
「ルピナスに会いたいってこと?」
「ええ…まあ」
 多分、無理だろうなと思っていると。
 案の定、クリス様は怖い顔をした。
「今回はルピナスの件で呼び出しだから」
「やっぱり…」
 ルピナス様は、国王の甥っ子。
 そして、今のところ王位継承者第一位の王子様。
 幼い彼は、この前。
 私にプロポーズしてきたのだ。

 私は、ルピナス様にピアノを教えていた。
 これといって好かれているとも思わなかったけど。
 あのプロポーズは一体、なんだったのか。