酒好きがバレて追放された元聖女ですが、不眠症の辺境伯様と【秘密の晩酌】はじめました 〜昼は冷徹、夜は甘々。ほろ酔い旦那様の執着愛が止まりません〜

 昼下がりの厨房。
 私がシードルの仕込み(というか味見)をしていると、背後に気配を感じた。

「……アマレッタ」

「うわっ、びっくりした!」

 振り返ると、そこには深くフードを被り、顔の半分を布で隠した不審者が立っていた。
 いや、よく見れば旦那様だ。
 アイスブルーの瞳が、フードの奥から私を覗き込んでいる。

「辺境伯様? そんな格好でどうされたんですか? もしかして、城への侵入者ごっこ?」

「……違う」

 彼はむっとしたように布越しに口を尖らせた。

「視察だ。……街へ出る」

「視察?」

「ああ。君の作ったシードルが市場にどう出回っているか、領主として確認する必要がある」

 ふむ。
 もっともらしい理由だ。
 だが、彼の視線が微妙に泳いでいるのを、私は見逃さない。
 それに、わざわざ変装までする必要ある?

「ついてこい。……二人だけで行く」

 彼はそっぽを向いて言った。
 耳が赤い。

 なるほど。
 翻訳すると、「デートしようぜ」ということらしい。

(不器用だなぁ……。ちょっとかわいいかも)

「承知いたしました。護衛もなしの極秘任務ですね?」

「……そうだ。極秘だ。誰にも見つかってはならない」

「了解です。では、私も着替えてきますね」

 せっかくのお誘いだ。
 お酒の視察というなら、付き合わない理由はない。