跳べない君と、はねない私





朝の通学路、軽やかな歩調のミキナとは、対照的に私はやや猫背気味に歩く。

「流石、凛奈としか言いようがないわ」

昨日起こった毒霧事件を話すとあっけらかんと、
ミキナは笑ってみせた。

「致死量のポンコツ具合」

腹をかかえいるミキナを見て、私も口元だけで「はは」と乾いた笑いをつくった。

「でも、よかったじゃん。恋愛対象から自動的に外れたじゃん」

「嫌われたかったわけじゃないもん」


でも、ミキナの言う通りだ。

嫌われたくないとか言い訳したけど、結局のところ、私は少し浮かれていたんだろう。

昨日の事件で、残っていた一ミリ程度の期待も綺麗にへし折られた。

これでいい。

これから三年間、地道に勉強しよう。

「おはよー」

不意に後ろから聞き覚えのある声がした。

「う、うわ!」

振り向きざまに変な声が出る。

声をかけてくれた友木くんは、目を丸くした。

友木くんは悪くない。

問題は、その隣だ。

友木くんの隣には、相変わらず眉間に皺を寄せた翼くんが立っていた。

やばい、朝から凛々しい…。

このペースで毎日、翼くんが供給されたら、多分死ぬな。

だって、心臓に悪すぎる。

「そ、そんなに驚く?」

友木くんは、私の気持ちなんて微塵も知らない。くしゃっと顔を崩して笑う。