「……それじゃあ、そろそろ行きましょうか」
「行くって、一体どこに」
急にそう言われて戸惑ってしまったが、そもそもそういう約束だったと思い出して。でも男性と二人きりで出かけるのは初めてで、どこに連れて行かれるのかと緊張してしまう。
そんな私を安心させるように、瀬戸口さんは優しい声で……
「そうですね。以前お話ししたように俺の会社も見にきて欲しいのですが、今日は休みなのでまた今度にして。今日はゆっくり話を出来るところに向かおうかと」
「ゆっくり……ですか?」
そういえば、初めて会った時も彼はそう話してくれて。会ったばかりの私の事を信用してくれてるようで、それがすごく嬉しかったの。でもゆっくり話を出来るところって、どんな場所のことなのだろう?
「ええ、ところで伊千夜さんは甘いものはお好きですか?」
「えっと、わりと好きな方だと思いますけど?」
「それなら良かった」
そう言うと瀬戸口さんは車を発信させると、パーキングを出てどこかへと向かい始めた。普段は来ない駅だしこの辺の地理も全く分からないので、大人しく助手席に座っていると「クスッ」と小さな笑い声が聞こえてきた。
不思議に思って瀬戸口さんの方を見てみると、彼は少し困ったような顔をしていて。
「ああ、すみません。伊千夜さんが置物みたいになっているので緊張させてしまったかな、と」
「あ……その、すみません。こういうの、慣れてなくて」
