疎まれ令嬢の一途な政略婚


「それは、どういう意味なのでしょうか?」

 慎重に……瀬戸口(せとぐち)さんがどこまで知っているのかを、探るような聞き方になってしまうが仕方ない。余計な事をこの人に喋ってしまえば、兄からの叱責は避けられないから。
 そう思うと同時に、瀬戸口さんを騙しているような罪悪感も胸の中には確かに存在していて。本当にこの縁談をこのまま進めていいのかと、心に迷いが生まれた。
 ギュッと固く握った手が震えている事を、自分では気づいてなくて。

「……いえ、浩晴(ひろはる)はあまり伊千夜(いちよ)さんの事を良いようには話さなかったから。でも勝手な思い込みで話してしまったので、今のは忘れてください」
「はい」

 瀬戸口さんの方から一歩引いてくれたので、本当に良かったと思う。もし確信をもって質問されたら、私は嘘を突き通せる自信が無かったから。
 そんな私の握っていた手に、瀬戸口さんの大きな掌が重ねられて……

「もしスマホが無くても、次の約束をこの場で決めてしまえば問題ないですよね。お互いの目印になる物も含めて、ね?」
「瀬戸口さん……」

 ふわりと微笑んでくれたその笑顔が眩しくて、瀬戸口さんはまるで太陽のような人だと思ってしまって。その優しさに、胸がとても暖かくなったように感じた。