疎まれ令嬢の一途な政略婚

  自分の部屋に戻るとすぐに着替え済ませ、離れにある兄の書斎へと向かう。今日のお見合いについては瀬戸口(せとぐち)さんから兄に連絡すると言われたが、自分からもきちんと伝えておかなければ。
 でもそれは建て前で、本当のところは今の兄の反応を確認したいというのもあった。

浩晴(ひろはる)兄さん……伊千夜(いちよ)です、今帰りました」
「ああ、さっさと入れ」

 失礼しますと言って、兄の書斎へと入る。普段はここに来る事すら許されないが、今回の話は他の誰にも聞かれたくないらしい。
 その理由が今回の見合い相手である瀬戸口さんであることは、何となく理解出来たけれど。

「アイツから連絡があって、この話を進めさせて欲しいと言われたんだが……伊千夜、お前はどう思う?」
「……私が、ですか?」

 兄の性格からして、私に意見を聞くことなどいつもだったら有り得ない。きっと瀬戸口さんが、私の気持ちを優先した上での返事を求められたのだろう。
 その証拠に兄の浩晴は、表情と態度で『俺が望む返事をしろ』と私に圧をかけてくる。瀬戸口さんがどんなに私に気を使ってくれていても、こうして全て無駄にされることが凄く悲しいと思う。
 けれど、今の私にはその方が都合が良かった。

「それはもちろん……この古城(ふるしろ)家と浩晴兄さんの役に立てれるのなら、喜んで」