ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 なんとか一次試験を通過してほっとしたのも束の間、すぐに二次試験が待っている。
 私は安心感と不安感で、ただソファでぼーっとしていた。
 昨日は先生に合格の件を言った後に、安心してそのまま家で寝てしまい、結局会えなかった。

 起きた時の着信の量が凄かった。
 先生が来ようとしたけど、真夜中だったから断った。

 今日は特に用がないから本屋にでも行こう。
 ゆっくり立ち上がって準備をする。
 そして、いつもつけている、先生からのネックレス。

 先生は仕事で今日も忙しいから、一人で駅をぶらぶらしよう。
 そういう時間も大切。

 私はバスで駅に向かった。
 通り過ぎる景色を見ながら、先生の車の中で見る景色と比べていた。
 同じ景色なのに違って見える。

 先生といる時は、景色よりも先生の存在感の方に気を取られてて、ちゃんと見れてなかった。
 先生と出会うまでは平凡な毎日だった。

 バスが駅について、降りると、真夏の暑さが凄い。
 日傘をさして、本屋まで歩いた。
 今日は、三年前に先生とばったり会った本屋まで行こう。
 きっとあの頃の私に少し戻れる気がする。

 その本屋に久々に行ったら内装がかなり変わっていた。
 モダンな感じ。
 ウロウロしていたその時、見覚えのある横顔が。

「先生……?」

 その声に振り返ったその人は、高校生くらいの男の子だった。

 やってしまった。

「すみません、人違いでした……」

 急いで本屋を出ようとした。

「ねぇ、待って」

 その子に肩を掴まれた。

 振り返ると、その子の顔は、本当に先生に似ている。
 他人の空似?
 目が離せない。

「水島白乃(しの)さんですよね?」
「え?」

 なんで私の名前を?

 その子はイタズラな笑顔を浮かべていた。

「ねぇ、夏雄と付き合ってるんでしょ?」
「え?」

 なんで知ってるの?
 私と先生の事を。
 この子はまるで、先生が高校生になったみたいな風貌で、底知れぬ何かを感じる。

「人違いです」

 私はそのままそこを去ろうとした。

 その時、

「俺、(りょう)って言うんだ。白乃さん、宜しくね」

 その笑顔は、爽やかそうだけどどこか作りものみたいな──

 全力で逃げた。