ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 ── 一次合格発表当日。

 水島は発表まで毎日電話で泣きついてきて、俺は毎回それに適当に安心する言葉をかけていた。

 なんであんなにあいつは必死なんだ。
 落ちても来年がある。
 でもあいつは今本気で合格を目指している。

 その時、水島から連絡があった。
 急いで廊下に出た。

「どうだった?」
『先生……うぅぅう』

 泣いていた。
 落ちたか……。

「来年もあるから、そんなに気を落とすな。俺がどっか楽しいところ連れていくから」

 それくらいしか言えない。

『う、受かりましたああああ』
「は!?」

 廊下に響きわたるような声で言ってしまった。

 正直、受かるとは思ってなかった。
 あいつはそんなに勉強が得意なタイプではなかった。

「おめでとう」
『う〜……ありがとうございます』

 教員になる事に対して最初は否定的だったのに、安堵している自分は、結局同じ場所に来て欲しいと思っているのか。

 ただ、あいつが頑張っている姿を、見守りたかった。
 多分今が、俺の人生で一番真っ直ぐなんじゃないかと思うくらい、本気で誰かの人生に向き合った気がする。

 臆病だけど真っ直ぐなお前の──

 その時、

 突然あの時の水島が見えた。
 進路指導の時、俺と一対一で話した、数少ない日。

 俯いていた。

 将来何になりたいか聞いたら

『まだ何も……でも本を読むのが好きなので文学部に行こうか考えています』

 そんな弱々しい事を言っていた。

 たまに寄る本屋にいるのをよく見かけた。
 本を探している時のあいつはとても楽しそうだった。

 卒業してどうなるか気になっていた。

 結局俺が追い詰めて自分のものにしてしまったから、あいつは俺への想いで教員を目指したと思う。

 でも、お前が後悔してないなら、それが一番安心する。

 俺と出会った事を。