ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 私はまた、あの教室にいた。
 先生と過ごした教室。
 そして、先生の授業を見ていた。

 先生は、とても去年まで大学生だとは思えないくらい余裕がある。
 先生は私みたいに、小さなことで動揺したりしない。

 でも、一年目は大変だったのかな。
 もし、あの頃の先生に今出会えたら……色々聞きたいな。

「水島」
「はい!」

 先生が横にいた。

「具合悪いか?」

 少し心配そうな先生の表情。

「いえ……。あなたのことをもっと知りたくなったんです」

 いつの間にか周りの生徒がいなくなって、私と先生だけになった。

「お前が追いついたら教えてやるよ」

 その時の先生の表情は、今とは違ってとても鋭かった。

 ──その時目が覚めた。

 もう朝だった。

 私はすぐに準備を始めた。

 受かったら、もっとあの時の先生に近づけるのかな。
 いや、教員にならないとわからないかな。

 首に先生からもらったネックレスをつけた。
 着替えて鏡を見て、気を引き締めた。

 絶対受かる!

 * * *

 家を出ると、夏の暑さが容赦なく襲ってきた。
 試験会場には、同じように緊張した表情の受験生がたくさんいた。
 指定された席に着いて、深呼吸。

「それでは、試験を開始します」

 ペンを書く音、ページを捲る音だけが響く。
 時間があっという間に過ぎていく。
 できた問題もあれば、悩んだ問題もあった。

「終了です」

 ──でも、やれるだけの事はやった。

 やっと終わった……。
 全身から力が抜けて、会場を出ると疲労感でふらふらだった。

 その時——

「お疲れ」

 先生が迎えに来てくれていた。

「先生!」

 思いがけず先生に会えて、急に涙が出そうになった。

「どうだった?」
「手応えは……微妙です。でも、精一杯やりました。」
「そうか」

 いつもと変わらない反応。

「受かるといいな」

 先生の呟いた一言に救われる。

 * * *

 車の中で、私はぼんやりと窓の外を見ていた。

「そういえば……夢を見たんです」
「夢?」
「先生の授業を受けてる夢でした。あの教室で……」

 先生が少し考えるような表情をした。

「……行ってみるか」
「え?」
「あの教室。」

 気がつくと、車は学校の方向に向かっていた。