ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

「お前が教師になったって、俺とお前が同じになるわけじゃない」
「どうしてですか?」
「経験が違う。実習三週間と、実際に何年も教壇に立つのとでは全然違う」

 先生は窓の外を見つめていた。

「それに……実習中も色々あっただろ?教師になったら、もっと色々ある」

 その時、先生の声のトーンが変わった。

「職場の男とも関わることになる」

 嫌な予感がした。

「え、それは……そうですが……」
「分からないことがあったら相談して、飲み会にも参加して……」

 車が急に路肩に停まった。

「先生?」

 夏雄先生が振り返った時、その目は鋭かった。

「お前みたいなタイプは、また中山みたいなのに翻弄される」
「え……?」

 先生が私の腕を掴んで、急に距離が縮まる。

「お前は俺だけを見ていればいい」

 私は先生のこんな表情を久しぶりに見た。
 嫉妬に駆られた、あの時の先生。

「でも…それじゃ成長できなくないですか?」
「成長?」

 先生の顔がさらに近づいた。

「俺が教えてやる。他の男は必要ない」

 その瞬間、先生の唇が私の唇に重なった。
 車内に、二人だけの世界が生まれる。
 息苦しいほどの密着感と、先生の体温。
 キスが終わると、先生は私の額に頭をつけた。

「実習で教師への想いが強くなったのは分かった。でも……」

 先生が私の頬に手を当てる。

「他の男に指導されるのは嫌だ。お前を狙う男がいるのも嫌だ」

 その独占欲に、私は少し困ったけれど……。

「先生、地球の半分は男の人なんですよ……?」

 同時に少し嬉しかった。

「分かりました。何かあったら、必ず先生に相談します」

 私がそう答えると、先生は少しだけ落ち着いた。

「……本当に教師になる気か?」
「はい!」
「途中で投げ出すなよ」
「投げ出しません!」

 先生は暫く考えた後、表情が少し柔らかくなった。

「お前なら、案外うまくやるかもしれないな」
「え?」
「ただし、困った時は俺に相談しろ。他の男じゃなく、俺にだ」
「はい……約束します」

 独占欲が強すぎる……!

 先生が再びエンジンをかけた。
 私の新しい人生も、今、動き出そうとしていた。

 先生の独占欲と一緒に──