ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

「同じクラスだった……田中君という生徒がいたの、覚えていますか?」
「田中?」

 先生は首をかしげた。

「家庭の事情で進学を諦めようとしていた生徒です。お父さんが病気で……」
「ああ……」

 かすかに思い出したような表情。

「先生、放課後にその子と何度も面談してましたよね。色んな資料を見せながら……」

 あの時のことを思い出す。
 私は偶然、職員室の前を通りかかった時に見てしまった。
 夏雄先生が田中君と向き合って、真剣に話している姿を。

「あの時に、私は心動かされました」

 先生は何も言わなかった。

「田中君、結局国立大学に進学できましたよね。今でも先生に感謝していると思います」
「……そんな大げさな話じゃない」

 先生は困ったような顔をした。

「でも私には、とても印象的でした。あの時の先生は……とても輝いて見えました」

 私は先生の顔をじっと見た。

「実習で改めて分かったんです。教師になれば、先生と同じ立場で生徒たちを支えることができる」
「同じ立場?」

 先生が苦笑した。