ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 志穂さんとの会話から一週間が経った。
 私は夏雄先生に会うため、いつもの待ち合わせ場所に向かった。
 車の助手席に座ると、先生はいつものように何も言わずに車を走らせる。

 いつもなら、この沈黙も心地よかった。
 でも今日は違う。
 私には、どうしても伝えなければならないことがあった。

「先生……」
「なに?」
「実習を通して、改めて思ったんです。私、本格的に教師を目指したいです」

 ハンドルを握る先生の手が、わずかに止まった。
 信号待ちで車が止まると、先生はゆっくりと私の方を向いた。

「……三週間やってみてどうだった?」
「正直、想像以上に大変でした」

 私は実習での日々を思い出した。

「授業をするのって、見てるのとは全然違いますね。三週間、本当にあっという間でした」

 信号が青に変わり、車がゆっくりと動き出す。

「それでも、やりがいを感じたのか?」

「はい。生徒たちが私の授業を真剣に聞いてくれた時とか、最後に手紙をもらった時は……本当に嬉しくて」

 先生は複雑な表情を浮かべた。

「実習はほんの少しやってみたレベル」
「それは分かっています。でも……」

 車は静かな住宅街を走っていた。

「お前は優しすぎる。そういう奴は、精神的に潰れやすい」

 先生の声に、いつもの心配が滲んでいた。

「それでも、なりたいんです」
「なんで?」

 私は少し迷ったけど、話すことにした。