ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 だんだんと、担当しているクラスの生徒たちにも馴染めてきた。

 なんだかんだで、教育実習は残り一週間。
 あっという間だった。

 先生と同じ場所にいられるのも、あと一週間かと思うと気持ちが沈んだ。

 今日やる事を終えて、職員玄関から出て帰ろうとした時、中山先生に声をかけられた。

「水島さん、俺も帰るところだから駅まで送ろうか?」

 中山先生と二人──

 少し不安だけど、今日は少し疲れてるし、お願いしようかな。

「ありがとうございます、お言葉に甘えて宜しくお願いします」

 私は中山先生の車に乗った。

 車の中では、中山先生が学校の裏話をいろいろ教えてくれた。

 教員って、思った以上に大変なんだな……。
 ちょっと、自信がなくなってきた。

 夏雄先生に会いたくて……いや、先生みたいな教師になりたくて始めた実習だけど、やっぱり私には向いてないのかもしれない。

 そんなことを悶々と考えていたら——

 気づいた時には、知らない場所にいた。

 え……?

 あたりに人気がまったくない。
 嫌な予感がした。

「水島さんさ……昨日、夏雄先生と教室で抱き合ってたでしょ?」

 ——バレていた。
 何も言えなかった。

「実習中にあれはまずいよね」
「すみません……」

 怖い。

「夏雄先生さ……卒業生に手を出してるって噂になってるんだよね」

 心が凍りついた。
 ショックで、身体が動かなかった。
 先生が……私以外にも……?

 その時、中山先生の手が私の手に触れた。

「俺ならそんな事しないし、水島さんの事、大事にできると思う」

 突然言われた言葉に頭が真っ白になった。
 そんなふうに中山先生に思われていた事に全く気が付かなかった。

 少しずつ中山先生の顔が近づいてきて、唇が触れそうになったその瞬間——

 私は反射的に顔を背けた。

「夏雄先生は諦めなよ。水島さんで遊んでるだけだから」

 ……そんなはずない。
 私と先生は、そんな関係じゃない。

 その時、助手席のシートが倒された。
 中山先生が覆い被さってきて、力強く抱き寄せられた。

 怖い……!

 力を入れても全く動かない。
 これじゃ逃げられない。

 いつの間にか首元がはだけていて、中山先生の唇が肌に触れた。

「やめてください……!」

 中山先生はじっと私を見た。

「男の車に一人で乗るって、許してるって思われても仕方ないよ?」

 え……?

「そういう無防備なところに、惹かれるんじゃないかな」

 そんなつもりはなかった。
 ただ信じていた。

「そうやって嫌がってるふりしてるけど、本当は期待してたんでしょ?」
「違います!」

 だんだんと身体を侵食されていって、逃げようとしたその時——

 誰かが、ドアをノックした。

 息を切らせた夏雄先生がそこに居た。