ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 その日は学校の先生や職員の人達の飲み会だった。
 私たち実習生も参加させてもらって、先生と少し離れた席に座った。

 確か、前先生が具合が悪くて(うずくま)っていたのは、ここの近くだったような。
 いつも突然現れるから怖かったけど、偶然だったのを聞いて少し安心した。
 本当はわからないけど。

 先生の姿が見えるだけで嬉しい。頬が緩んでしまう。

 すると、島田くんが話しかけてきた。

「水島さんが俺のこと覚えてなかったの、ちょっとショック……」

 ビールを飲みながら、少し寂しそうに呟く。

 ——正直、覚えていなかった。

 クラスも違ったし、私は先生しか見えていなかった。

「実習終わったら、どこか遊びに行こう?」
「うーん。そうだね……考えておくよ」

 そのとき、夏雄先生が突然、私と島田くんの間に割って座ってきた。

「水島、お前、最近どうなの?」

 ——目が、まったく笑っていない。

「えーと……楽しいですよ!」

 先生はそのままその席に居座った。
 島田君は気を遣って離れて行った。

 先生が隣にいるのが嬉しくて、私はビールを飲みすぎた。

「先生〜好きなんです……好き……」

 酔った勢いで、気持ちを口走ってしまう。
 先生が慌てて私の口を押さえた。

 頭がくらくらする。
 腕を絡ませようとしたら、逃げられた。

 ……ひどい。
 なんで逃げるの?
 悲しくて泣いてしまった。

「先生、もう私の事なんてどうでもいいんですね」

 先生は仕方なく、私を外に連れ出した。

「お前、他のやつらが見てる前で何やってんだ!」
「すみません……」

 だって、近くにいたら気持ちが抑えられない。

 先生は誰かに電話をしていた。
 そして私を車に乗せた。

「まだ帰りたくないです!」
「ダメだ。お前、酔いすぎてる」

 先生は車を走らせた。
 そのあと、途中で車を停めて静かに言った。

「もう他のやつらの前で絶対に言うな」
「はい……わかりました」

 頭では理解してる。
 今のは酔った勢いで言ってしまった。

 でも──

「会いたかったんです。ずっと……」

 先生は黙っていた。

「先生はどう思ってるかわかりませんけど」

 まだ頭がハッキリしていない。

「私には、先生を忘れる事は……なかった事にするのはできませんでした」

 ──その後の記憶はなかった。

 ただ、家に戻ってお風呂に入ったとき、 知らない痕が体にたくさん残っていた。