ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 ──それっきり。

 先生とは、会わなくなった。

 あの朝以来、一度も連絡は取っていない。
 最初の数日は、先生からの連絡を待っていた。
 スマホを何度も確認して、着信がないかチェックして——
 でも、何もなかった。

 私からも連絡しようとした。何度も。
 でも、できなかった。
 連絡をしないということに、意味があるんじゃないか——
 そんなふうに思うことで、納得しようとしていた。

 でも、本当の理由は違う。
 私は怖かったんだ。
 先生が婚約破棄したことで、何か大きな代償を背負ったことは分かっていた。

 私は、先生が私を選んでくれたことがただ、嬉しかった。
 でも、それは誰かの犠牲の上にあった。
 決して、祝福される関係ではなかった。
 それでもよかった。
 私は——

 先生がその後どうなったのか、私は知らない。
 家族や相手の方と、色々あったのかもしれない。
 けれど、私はその中に踏み込むべきじゃない。
 ……そう思った。

 次に会ったら、先生が何を言うのか。
 もう私を必要としないと言われるのが、怖かった。
 だから、連絡できなかった。

 でも——

 忘れられなかった。
 どれだけ離れても、どれだけ時間が経っても。
 私の中には、あの人がいた。

 新しい恋をしようとした。
 大学で、バイト先で、男の人から声をかけられる事もあった。

 でも無理だった。

 誰と話していても、どこかで先生と比べてしまう。
 先生はもう、私の中に根を下ろしていた。
 遠くにいるのに、いまだに私を縛っていた。

 だから私は、今——

 母校にいる。

 "教育実習生"として。

 教師を目指したいという気持ちがなかったわけじゃない。
 先生の影響で、教員に興味を持ったことも確かにある。

 でも、本当の理由は……。
 先生に、会いたかった。
 そんなこと、正直に言えるはずがない。
 それでも、もう一度だけ……会いたかった。

 先生が今、どうしているのか知りたい。