ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 私は気がついたら——

 あの教室にいた。

 懐かしい、三年生の時の教室。
 木製の机と椅子が並んでいて、黒板には何も書かれていない。
 私は制服を着ていた。
 あの頃の制服。

 これは夢?
 現実とは思えない、不思議な感覚。

 教室には誰もいなくて、窓には青空が広がっている。

 その時、教室のドアが開いた。

 夏雄先生だった。
 あの頃の先生。

「水島……どうした?」

 あの時の優しい笑み。
 作り物じゃない、本当に優しい笑顔。

「なんか、戻ってきちゃったんです。ここに」

 自分でも、なぜここにいるのかわからない。
 でも、懐かしくて、安心できる場所だった。

 先生は何か考えている。
 少し困ったような、心配そうな表情。

「ダメだよ、ここに戻ってきたら」
「え……?」

 なんで?
 ここは、私たちの思い出の場所なのに。
 先生は窓の外を指差した。

 そして窓を開けたら——

「よく聞いてみて」

 聞く……?
 なんだろう……。

 静寂の中に、かすかに声が聞こえる。

 ──先生?

 先生の声が聞こえる。
 しかも、何か叫んでいる。

「水島!しっかりしろ!」

 その時、そこにいた先生はいなくなっていた。

 私はよくわからなくて、私を呼ぶ声の元へ——

 窓から飛び出した。
 空中に身を投げ出した。

 怖くない。
 その声の方に行けば、きっと大丈夫。