ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 仕事を終えて、職員玄関を通ろうとしたとき。
 そこに志穂さんが立っていた。

「夏雄さん、お疲れさまです」

 優しく微笑む。

「今日はどうしたんですか……?」
「夏雄さんのお仕事してるところ、見たくて」

 そんなことを言いながら、俺の車に乗り込んできた。

 家まで送る途中——

「今日、あの子に会ったんです」
「……あの子って?」
「水島さん」

 なんで名前を知ってる?
 あいつが教えたのか?

「結婚式の招待状を、渡しに行ったんです」

 志穂さんは、あくまで穏やかに言った。

「……そうですか」

 どこで? どうやって? 連絡先でも交換していたのか?

「どうされたんですか?」

 俺の動揺に気づいたのか、志穂さんが訊いてきた。

「いえ、何もないですよ」

 不安が募る。
 水島、何かされたんじゃないか?

 志穂さんを家まで送り届けたあと、すぐに水島に電話をかけた。
 だが、全然出ない。

 やっと出たと思ったら——

「はい。どちら様ですか……?」

「は?俺だよ」

「え!先生!?……あ、番号消してました。すみません……」

 なんで番号消してるんだよ。
 いや、俺が悪いのか……?

「お前、今日志穂さんと会った?」
「はい。朝、家の前にいましたよ」

 家の前!?
 なんで志穂さんが、あいつの家を知ってるんだ?

「先生、私たちのこと、たぶん全部バレてますよ……」

 どういうことだ。

「電話ももしかしたら──もう、話すのやめましょう」

 そして、一方的に電話を切られた。
 俺は車の中で一人、呆然としていた。
 志穂さんは最初から知っていたんだ。

 俺と水島の関係を。

 それなのに、なぜ結婚を続けるつもりなのか。
 わからない。
 志穂さんの考えていることが、まったくわからない。