ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 先生の結婚式の日がわかった。
 愛美から聞いた。

 ——二週間後。

 とうとう、その日が来てしまうのか……。

 胸の中が、寂しさでいっぱいだった。
 これで、本当に終わってしまう。
 仕方がない……。

 でも私はあの日、先生に本当の気持ちを伝えられた。
 先生と心を通わせた。
 それだけで、もう十分だったはず。

 それなのに、私は──

 あの人をどうしようもなく、愛してしまったんだ。

 * * *

 学校へ行こうと自宅を出た——そのとき。

 玄関の前に、先生の婚約者が立っていた。

「え、あの、どうしてここに……?」

 彼女は微笑んでいた。
 けれど、その目はまったく笑っていなかった。

水島白乃(みずしましの)さん」

 ——なんで私の名前を……?

「私、興信所を使って、あなたと夏雄さんのことをずっと調べていたんです」
「コウシンジョ……?」

 頭が真っ白になった。

「えーと、どういう意味ですかね……?」

 彼女は笑みを崩さぬまま、鋭く言った。

「夏雄さんと、関係を持ってるんですよね?」

 ゾッとした。
 なんで、それを……。

 彼女は私に封筒を渡してきた。

 そこには——

 先生と会っていたときの記録が──写真が入っていた。

 本屋での写真。
 あの日、先生の酔い覚ましに一緒に居た時の写真。
 私が学校の近くを歩いている写真。

 いつから?
 どれくらいの期間、監視されていたの?
 手が震えた。

「でも、もう終わったのよね?」

 ──怖い、この人……。

「はい……私は、先生とはもう何もありません」

 彼女はにっこりと微笑んだ。

「よかった。もしよければ、二週間後いらっしゃらない?」

 結婚式の招待状を渡された。

「……はい。ありがとうございます」

 もう二度と先生に近づかない。
 私は心にそう誓った。