ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 その日、家に帰ってきたあと——

 玄関のドアを閉めた瞬間、膝から力が抜けた。
 私はその場にへたり込んでしまった。

 先生とまともに話したことがなかったから、すごく緊張した。
 それに、生徒の時は優しそうで穏やかな雰囲気だったのに、あの時の先生は全然違っていた。

 あの笑顔は、どこか作り物のような気がした。
 本当の先生は、もっと複雑で、もっと深いところに何かを隠しているような——
 まるで、私のすべてを見透かしているような目をしていた。

 ……怖かった。

 でも、心のどこかでは、また会いたいと思っている自分がいた。

 * * *

 次の日の夜。

 高校でクラスは違ったけれど仲が良かった愛美と、駅前のファミレスで夜ご飯を食べていた。
 大学が違うから、こうやって会うのも久しぶりだった。
 近況を話したり、他愛もないことで盛り上がっていた。
 愛美は相変わらず明るくて、大学での面白エピソードを次々と話してくれる。
 いつもなら私も笑って聞いているのに、今日はなぜかちゃんと集中できない。
 昨日のことが、まだ頭から離れていなかった。

「そういえばさー、三年の時の白乃《しの》の担任の先生、凄いかっこよかったよね。羨ましかった」

 ドキッとした。

「そうだね……全然話せなかったけどね」

「私、また会ってみたいなー。今度一緒に行かない? 高校」

 ──え?

「私も……?」
「一人は緊張するしー!担任だったんだから、白乃がいてくれた方がいい!お願い!」

 どうしよう……。
 ここまでお願いされると断りにくい。

「……わかった。土曜日なら先生、いるかもしれない。たぶん」

 愛美は嬉しそうに笑った。

「やったー!白乃がいてくれると心強い!」

 私は先生に合うのが怖い。
 あの目で見られたら、またあの時みたいに動けなくなってしまうかもしれない。
 でも、愛美の期待を裏切るわけにはいかない。

 それに——心のどこかでは、また先生に会いたいと思っている自分もいる。

 この矛盾した気持ちが、私をさらに混乱させた。