ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 俺の知らないところで、勝手に結婚の話は進んでいた。

 式場、招待客、新居——

 全部どうでもよかった。
 すべてが他人事のように感じられた。

 何より、頭から離れなかった。

 ——水島のことが。

 あいつが卒業してまた現れてから、抑えてた気持ちが暴走して、俺にも予期せぬタイミングで現れたりするから、余計に歯止めが効かなくなっていた。

 水島は、去年まで高校生だった。
 精神的にもまだ未熟だ。
 でも、それ以上に俺が未熟だった。
 大人ぶってるだけだった。

 好きなのに、意地悪をしてしまう。
 欲しいのに、傷つけてしまう。
 自分で追い詰めたのに、逃げないでほしい。

 自分が最低な人間だと思い知らされた。
 自分の感情を理解できないまま、水島を振り回していた。

 あれから一ヶ月が経った。

 ようやく諦めがついた——はずだった。
 水島のことも、もう忘れようとしていたのに。

 ——あいつは、学校に現れた。

 最悪のタイミングだった。
 あいつの顔を見た瞬間、すべてが振り出しに戻った。
 俺は、なんとか平静を装った。
 大体、何を聞かれるかは想像がついていた。

 もう学校関係者も、結婚の話を知っている。

 ——もう、戻れない。

 水島は言った。

『私は……先生にとって、オモチャだったんですか?』

 その言葉を聞いた瞬間、胸が締めつけられた。
 そんなふうに思わせてしまった自分を、心底後悔した。
 謝るべきだったのか。

 いや、もうどうにもならない。

 一ヶ月後には、俺は結婚する。
 この関係は、きちんと終わらせなきゃいけない。
 だから、敢えて“そう”伝えた。

 水島は俯いたまま、教室を出ていこうとした。
 この関係は本当にここで終わる。
 そう思った、その時。

『私はそれでも、先生のことが好きでした』
『……お幸せに』

 平然を装って、全部を諦めて、未来を受け入れようとした。

 でも——

 こいつを失いたくなかった。
 それだけだった。
 失ったら、一生後悔する。
 俺は、俺でいられなくなる。
 どうなってもいい。
 行かないでほしかった。

 でも、口にしてしまえば、もう戻れない。
 どちらかを選べば、どちらかが崩壊する。
 でも、崩れるのは水島じゃない。

 ——俺だ。