ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 その日の夜、私は愛美と会った。
 駅前のカフェで、いつものよつに近況を話していた。
 今日は、愛美は少し元気がなかった。

「どうしたの……?」

 私が心配そうに尋ねると、愛美はため息をついた。

「夏雄先生、結婚するらしいよ」

 ──え?

 結婚?
 嘘でしょ……?
 だって、私と先生はついこの前まで——

 頭が真っ白になった。

「……あー最悪。チャンスあると思ってたのに」

 愛美はアイスコーヒーを寂しげに啜っていた。

「私さ、あれから何回か学校行って、夏雄先生に会いに行ってたんだよね。ちょっとどこかに誘ったりして、もう少し距離を縮めようと思ってた。でもさ、毎回笑顔で上手くかわされてさ〜。婚約者いるなら、先に言ってほしかった。バカみたい」

 愛美の言葉が、胸に刺さる。

 本当だよ……。
 私なんて何も知らなくて。
 婚約者がいるのに、私をまるでオモチャみたいに扱って、最低だ。

 本当に、最低の男だ。

 でも、なぜだろう。
 その瞬間、涙があふれてきた。

「白乃?どうしたの!?」
「……ごめん、ちょっと前にあった嫌なこと、思い出しちゃって」

 あんな酷い扱いを受けていたのに、信じたかった。
 ほんの少しでも、私を想ってくれていたって。

 でもやっぱり違った。
 先生のことなんて、好きにならなきゃよかった。

「白乃、大丈夫?何があったかは聞かないけど……つらかったら、いつでも話して」

 愛美の優しさが、余計に胸に響く。

「ありがとう……大丈夫」

 涙を拭いて、無理に笑顔を作る。

 でも、心の奥では——

 まだ、先生への想いが消えていないことを、私は知っていた。