ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

 私は先生に連れられて、人通りの少ないオフィス街を歩いていた。
 しばらく歩いた先に、小さな休憩スペースがあった。
 二人でそこに腰を下ろす。

 先生は遠くを見つめていた。
 その横顔が、私からは見えなかった。
 酔いは、もう覚めたのかな。
 時間を確認しようとスマホを出して、ハッとする。

 ——財布が、ない。

 焦ってカバンの中を探り始めた。
 その様子に先生が気づいた。

「どうした?」

「財布がなくなってしまって……」

 先生は少し考え込んだあと、こう言った。

「俺が後で探すから、水島は帰りな」

 そしてスマホを取り出す。

「見つかったら連絡するから、電話番号教えて」

 電話番号——
 先生と距離を置こうとしていたのに。
 でも、財布がないと困る。キャッシュカードも入ってるし。
 仕方なく、連絡先を交換した。

 ──その時、空気が変わった。

 先生は立ち上がると、ゆっくりと私の方へ歩いてきた。
 その瞳は、どこか揺れていて、
 いつも以上に怖かった。
 私は反射的に全身に力を入れて、警戒した。

「お前さ、油断しすぎ。無防備すぎるだろ」

 ……何を言ってるの、この人。

「純粋で、何色にも染まってない」

 息が浅くなっていく。

「お前を見てると……汚したくなる」

 私は——

 全力で逃げ出した。