目が覚めて、一番に時刻を確認する。
8月29日午前4時。
スマホの画面に映り込んだ自分の顔にげんなりした。
「ひっどい隈…」
それに今日も泣いていたみたいで、顔が濡れている。
まだ欠伸が止まらないけれど、二度寝できる気分でもないし、すっかり目は冴えてしまった。
そそくさと洗面台で顔を洗って着替えてしまう。早めに冷やしておかなければ、目元が腫れて困ったことになるのは学習済みだ。
何故か今日は夢の内容を思い出せなかったけれど、どうせいつもの夢に違いない。じゃなきゃこんなに泣いたりしないと思う。
ゆっくり動いて時間を稼いでいるというのに、時刻はまだ4時半くらい。
夏休みに入ってから、こういう暇な時間の使い方が分からなくなって困っている。夏休み前はどう暇を潰していたのか考えたこともあるけど、何故だかさっぱり思い出せなかった。
いまだに何をして過ごすのが正解かわからないままだけど、折角だから新学期始まってすぐにあるテストの勉強を進めることにした。
午前6時半。
粗方勉強も一段落し、そろそろ祖母が起きる時間。
いつの間にか太陽も顔を出し、窓の外では雀が囀っている。
少しずつ、物音が鳴り始めた。
私は朝食を作っているであろう祖母の手伝いをするべく、部屋から出て階下の台所へと向かう。
「おはよう。おばあちゃん」
「おはよう。雪菜ちゃん。お野菜を切ってくれるかい」
「りょーかいでーす」
「いつもありがとうねぇ」
「いいのいいのそれくらい!いつも感謝してるのは私の方だし」
10年前のあの日から、祖母は随分と老いてしまった。
顔も手もしわくちゃで、とても小さく見える。
身長だって、もうずっと前から私の方が高い。
祖母の姿は毎日少しずつ、でも確実に老いていて、世の中にずっとなんてものはないことを突きつけてくるようでなんだか悲しい。
朝食を終え、食器を洗うと暇になる。
このままぼんやりテレビでも眺めていようかと思っていた私に、祖母が声を掛けた。
「雪菜ちゃん。折角だからお散歩でもしてきたらいいんじゃないかねぇ。アイスクリームを買えるように、お小遣いもあげようねぇ」
「ほんと?!ありがと!」
暑い時期に食べるアイスの魅力には、きっと誰も抗えないと思う。魔王を倒す勇者だって、夏のアイスにはKO負けじゃないかな?なんてアイス一本に打ち負かされる情けない勇者を想像して、クスッと笑う。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
「ーーあれ?」
今一瞬、祖母の姿が全く違う姿と重なって見えた。
皺一つない肌に、大きく波打つ真っ赤な長髪で、鋭い琥珀色の瞳で私を見る、背の高い二十歳くらいの女性。でも、それも一瞬のことで、すぐに幻みたいに掻き消えた。
ただの見間違い、か。暑さにやられて変なものが見えてしまったのかもしれない。
「…へんなの」
外は安定しない天気のせいか蒸し暑い。
せめてこの湿気さえ無ければまだ許容できる暑さだったかもしれないのに、湿った空気はそれだけでも鬱陶しい。
日傘でも買っておくべきだったと、少し後悔した。
「うわぁ…眩しすぎ…」
掌越しに太陽を眺めながら、どこに行こうかと思案する。
このままアイスを買いに行こうかとも思ったが、帰りがけに食べた方がきっと美味しい。
となれば、行き先は一つ。
8月29日午前4時。
スマホの画面に映り込んだ自分の顔にげんなりした。
「ひっどい隈…」
それに今日も泣いていたみたいで、顔が濡れている。
まだ欠伸が止まらないけれど、二度寝できる気分でもないし、すっかり目は冴えてしまった。
そそくさと洗面台で顔を洗って着替えてしまう。早めに冷やしておかなければ、目元が腫れて困ったことになるのは学習済みだ。
何故か今日は夢の内容を思い出せなかったけれど、どうせいつもの夢に違いない。じゃなきゃこんなに泣いたりしないと思う。
ゆっくり動いて時間を稼いでいるというのに、時刻はまだ4時半くらい。
夏休みに入ってから、こういう暇な時間の使い方が分からなくなって困っている。夏休み前はどう暇を潰していたのか考えたこともあるけど、何故だかさっぱり思い出せなかった。
いまだに何をして過ごすのが正解かわからないままだけど、折角だから新学期始まってすぐにあるテストの勉強を進めることにした。
午前6時半。
粗方勉強も一段落し、そろそろ祖母が起きる時間。
いつの間にか太陽も顔を出し、窓の外では雀が囀っている。
少しずつ、物音が鳴り始めた。
私は朝食を作っているであろう祖母の手伝いをするべく、部屋から出て階下の台所へと向かう。
「おはよう。おばあちゃん」
「おはよう。雪菜ちゃん。お野菜を切ってくれるかい」
「りょーかいでーす」
「いつもありがとうねぇ」
「いいのいいのそれくらい!いつも感謝してるのは私の方だし」
10年前のあの日から、祖母は随分と老いてしまった。
顔も手もしわくちゃで、とても小さく見える。
身長だって、もうずっと前から私の方が高い。
祖母の姿は毎日少しずつ、でも確実に老いていて、世の中にずっとなんてものはないことを突きつけてくるようでなんだか悲しい。
朝食を終え、食器を洗うと暇になる。
このままぼんやりテレビでも眺めていようかと思っていた私に、祖母が声を掛けた。
「雪菜ちゃん。折角だからお散歩でもしてきたらいいんじゃないかねぇ。アイスクリームを買えるように、お小遣いもあげようねぇ」
「ほんと?!ありがと!」
暑い時期に食べるアイスの魅力には、きっと誰も抗えないと思う。魔王を倒す勇者だって、夏のアイスにはKO負けじゃないかな?なんてアイス一本に打ち負かされる情けない勇者を想像して、クスッと笑う。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい」
「ーーあれ?」
今一瞬、祖母の姿が全く違う姿と重なって見えた。
皺一つない肌に、大きく波打つ真っ赤な長髪で、鋭い琥珀色の瞳で私を見る、背の高い二十歳くらいの女性。でも、それも一瞬のことで、すぐに幻みたいに掻き消えた。
ただの見間違い、か。暑さにやられて変なものが見えてしまったのかもしれない。
「…へんなの」
外は安定しない天気のせいか蒸し暑い。
せめてこの湿気さえ無ければまだ許容できる暑さだったかもしれないのに、湿った空気はそれだけでも鬱陶しい。
日傘でも買っておくべきだったと、少し後悔した。
「うわぁ…眩しすぎ…」
掌越しに太陽を眺めながら、どこに行こうかと思案する。
このままアイスを買いに行こうかとも思ったが、帰りがけに食べた方がきっと美味しい。
となれば、行き先は一つ。
