とある男子高校生の日常

その日は朝から雨が降っていた


屋上は閉鎖


それだけで、昼休みの行き先を失った気がした自分に、少し苛立つ


——くだらない


廊下は湿った空気で満ちていて
靴音がやけに響く


俺は人を避けるように、普段は通らない旧校舎側へ向かった


使われていない音楽室


ドアは少しだけ開いていた


中から、微かな音が聞こえる


ピアノ——

いや、鍵盤の上を指がなぞるだけの、音になりきらない音


覗くと、彼女がいた


「あ……」


昨日と同じ反応


でも、逃げない


「屋上、行けないね」


「……雨だからな」


窓を叩く雨音が、会話の隙間を埋める


屋上よりも、ずっと閉じた空間


「ここ、静かで好きなんだ」


彼女は鍵盤から手を離し、俺を見る


「黒瀬くんは?」


「偶然だ」


嘘じゃない