とある男子高校生の日常

黒瀬 恒一は、教室の隅でいつも窓の外を見ている


誰かと視線が合っても、先に逸らすことはない


ただ、何も映っていないかのような目で見返すだけだ



彼は笑わない


正確に言えば、「笑う必要がない」と知っている人間だった


授業中、教師の問いに当てられると、最短の言葉で正解を返す


余計な説明も、感情もない。その声音は低く、冷えたガラスのように澄んでいた


友人はいない


それを寂しいとも思っていない



人と関わることで生まれる誤差や期待を、彼は最初から切り捨てている



放課後、校舎裏を通ると、誰かが言い争っている声が聞こえることがある


黒瀬は止まらない



助けるか、助けないかを迷う前に


「自分が関与すべきか」を判断する
——関与する価値がない



そう結論づければ、足は自然と前に進む