とある男子高校生の日常

放課後、旧校舎の裏で彼女を見つけた


雨の後で、地面はまだ湿っている


「……少しだけでいい」


逃げ道を塞ぐ言い方はしなかった


ただ、事実として立っていた


彼女は立ち止まる


しばらく沈黙してから、ゆっくり振り向いた


「……どうしても、聞く?」


「聞かないと、終われない」


その言葉に、彼女は小さく息を吐いた


「黒瀬くんはさ」


視線を合わせないまま、話し始める


「人と距離を取ってるって、思ってた」


否定しない


「でも違った


本当は、近づきすぎないようにしてただけ」


胸の奥が、痛む


「私ね」


声が、少しだけ震える


「黒瀬くんの“特別”になるのが、怖くなった」


言葉の意味を、すぐには理解できなかった


「前に言ったでしょ。
無理に笑うと疲れるって」


「ああ」


「私、誰かの支えになる役、よくやるの」


空気を読む


黙って聞く


そばにいる