とある男子高校生の日常

最初に気づいたのは、屋上に彼女がいなかったことだった


偶然だと思った


そう思うには、十分すぎるほど静かだった


次の日も、その次の日も


昼休みも、放課後も


階段の踊り場


昇降口の端


どこにも、いない


教室で目が合っても、すぐに逸らされる。


挨拶もしない


まるで、最初から存在しなかったみたいに


——理由が分からない


それが、こんなにも不安を生むとは思わなかった


放課後、廊下の角で彼女を見つけた


一瞬、足が止まる


「……話がある」


声をかけた瞬間、彼女の肩が僅かに揺れた


「ごめん」


振り返らない


「今は、話せない」


拒絶でも、怒りでもない


逃げるような声